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日本がオールブラックスから学ぶべきこと…ラグビー日本代表を支えてきた経営者と廣瀬俊朗が見た“世界最高峰”の真の姿とは?
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byAFLO
posted2022/01/07 11:01
オールブラックスが試合前に披露する恒例の「ハカ」
さらに、上原社長はオールブラックスというプロフェッショナルの集団が身近になることで、日本のラグビー界の環境の改善が進むのではないかと期待をしている。
「私としては、あくまでラグビーの価値が広く伝わり、環境が整備される機会にしたいと思っています。たとえば、選手の待遇改善も大切なことで、廣瀬さんが代表の選手だった時の日当の金額を聞いて、本当に驚きましたから。2019年のワールドカップでは、日本中が代表の活躍に熱狂した。
だったら、他のプロスポーツのように、選手たちはもちろんのこと、スタッフにも還元される仕組みがあってしかるべきじゃないか。私はラグビーをより発展させるためにそうしたビジョンが必要だと思っていますし、待遇、福祉、PRといった面については、オールブラックスと一緒に取り組んでいくことで、より日本の環境が整えられるのではないかという期待を持っています」
パートナーシップ契約の締結は、ラグビー、いや、それよりも広いスポーツ界全般への影響を及ぼす可能性を含んでいるということだ。
W杯の熱狂、NZも驚いた“握手攻め”
ただ、そうしたチャンスが生まれるのは、オールブラックスが愛されているからだ。上原社長は、ニュージーランド協会との交渉過程で、こんなことに気づいたという。
「どうやら、オールブラックス側も、ワールドカップで日本での人気の高さに気づいたらしいんです。南アフリカとのプールステージ初戦、6万人を超える大観衆のほとんどがオールブラックスのファンじゃないかという雰囲気で、ニュージーランドの人も驚いたようです。
日本では、どこに行っても握手攻めだし、サインも求められる。ヨーロッパに遠征すると、そういうことはないらしいですから、日本での認知度の高さに衝撃を受けたでしょうね。そこで、ニュージーランド協会として、本格的に日本でもラグビーの発展のために活動をしたいという話をうかがって、連携していきましょうという流れになったわけです」
これには、思わず廣瀬さんも頬を緩めた。
「オールブラックスは、自分たちが日本でどんなに愛されているかを気づいてなかったんですね(笑)」
大正製薬とニュージーランド協会のパートナーシップは、これまでの日本のスポーツ界では見られなかった形のものだ。
このパートナーシップが、今後の日本のラグビー界にどんな影響を与えていくのか、見守っていきたい。