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日本がオールブラックスから学ぶべきこと…ラグビー日本代表を支えてきた経営者と廣瀬俊朗が見た“世界最高峰”の真の姿とは?
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byAFLO
posted2022/01/07 11:01
オールブラックスが試合前に披露する恒例の「ハカ」
「なんといっても、伝説に彩られたチームですし、世界1位の国と戦ったら、日本代表はどうなってしまうんだろう? という得体の知れない怖さ、プレッシャーを感じた記憶があります。下手をすると、試合内容によっては日本代表が積み上げたものを壊されてしまうんじゃないか、という恐れがありました。戦う前に、あれだけ見えないプレッシャーをかけられたチームは他になかったです」
廣瀬さんが感じたような「恐れ」を、上原社長もオールブラックスに対して感じたことがあったという。
「私が初めてニュージーランドの選手と接したのは、2014年の『リポビタンDチャレンジカップ』で、日本代表がマオリ・オールブラックスと対戦したときでした。私が勝利チームにカップを贈呈するのが試合直後ということもあるでしょうが、傍に寄ると、彼らはちょっと怖いんですよね。でも、試合が終わってアフターマッチファンクションで接すると印象がガラッと変わりました」
黒衣を脱ぎ、黒のスーツ姿に着替えた選手たちは気さくで、社交性に富んでいた。
「そのギャップもまた魅力的でね。そしてオールブラックスの魅力を最大限に実感したのは、2019年のラグビーワールドカップの時でした。オールブラックスのレジェンドといわれるリッチー・マコウや、ダン・カーターと会って話してみると、まさに紳士であり、人格者という感じでした。本当に魅力的な人間であり、チームだなと」
廣瀬さんは、オールブラックスというニュージーランドの文化を代表するメンバーに選ばれることが、人間的な成熟を促すのではないかと話す。
「立場が人を作るという言葉がありますけど、オールブラックスの選手たちはニュージーランドという国の誇りであり、国民から愛される。代表であることは選手にとってたいへんな名誉なんですよね。日本代表の主将を務めた僕の立場から見ても、彼らのことはカッコ良い、こうありたいと思えるチームです」
オールブラックスが表現する価値は、スポーツの垣根を超え、社会的な価値を持っているともいえそうだが、大正製薬は具体的にどのような活動を考えているのだろうか。
「ファンとの距離が近づくかもしれない」
「私の中では、商業的なことに結びつけようという思いよりも、どちらかといえばCSR的な発想で考えています。今回のパートナーシップ契約の締結によって、オールブラックスと日本のファンのみなさんの距離が、より近づくかもしれない。そうすれば、日本のラグビーがもっともっと盛り上がるんじゃないかなと期待しているんです。2022年1月には、新しいリーグが始まります。そしてオールブラックスに触れる機会も増え、さらに日本代表が活躍すれば、盛り上がらない理由がないわけです」