スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER

《大学ラグビー選手権》今年のキーワードは大田尾監督が発した「プレッシャーゲーム」優勝争いの中心にいる“早明帝”の現在地

posted2021/12/17 17:00

 
《大学ラグビー選手権》今年のキーワードは大田尾監督が発した「プレッシャーゲーム」優勝争いの中心にいる“早明帝”の現在地<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

早大・大田尾監督が「プレッシャーゲームで必ずやってくれる」と期待するNo.8佐藤健次(1年)。早明戦ではプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出された

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

PROFILE

photograph by

Sankei Shimbun

 大学ラグビー選手権が、いよいよ佳境を迎える。

 取材をしてきたなかで、今年のキーワードとして浮かび上がってきたのが、「プレッシャーゲーム」という言葉だ。

 これは早明戦の記者会見で、早稲田の大田尾竜彦監督が発した言葉である。プレッシャーのかかる試合で、いつも通りのパフォーマンスを発揮できる選手が先発の15人、リザーブを含めれば23人の中にどれだけいるかーー。これがポイントになりそうなのだ。

 なぜなら、去年、今年についてはコロナ禍ということもあり、春の練習試合を含め、経験できる試合の絶対数が減っている。つまり、経験値が例年に比べて低い。

 そうなると、首脳陣としてはプレッシャーゲームでの選手の「ストレス耐性」が計りにくく、思ったようなゲームプランを遂行できない可能性が膨らんでしまう。

迫力ある突進を見せた佐藤健次(1年)

 早明戦で下馬評を覆した早大の強みは、カギとなるポジションに高校時代から経験豊富な選手が多く、プレッシャーに晒された時のパフォーマンスに秀でた選手が多いことだ。

 たとえば、早明戦で「プレイヤー・オブ・ザ・マッチ」に選ばれたのはNo.8の佐藤健次。

 佐藤は昨季、桐蔭学園のキャプテンとしてチームを花園優勝に導いたが、早明戦ではとても1年生とは思えない突進力、パフォーマンスを披露した。遠慮ナシ、物怖じゼロといった感じで大物感を漂わせているが、大田尾監督は佐藤を次のように評した。

「彼のいちばんの特徴はプレッシャーゲームに強いこと。単体で見たらそんなに足も速くないですし、すごくいいタックルをするわけでもない。ただ、今日みたいなプレーを、プレッシャーゲームで必ずやってくれる。それが彼のいちばんの強みだと思います」

 この回答に、私はいたく興味をそそられた。「プレッシャーゲームにおける強さ」とは、人間がもともと持っている強さ、速さといった選手の素質にかかわる部分なのか?

 それとも、パスが上手くなる、キックが飛ぶようになるといったスキルと同様に、コーチングや経験によって成長を促せるものなのか?

 そんなことが頭に浮かび、大田尾監督にその疑問をぶつけてみると、監督は一拍置いてから「持っている素質もありますよね。佐藤はそれをもともと持っている」と答えたうえで、こう解説してくれた。

【次ページ】 「コーチングでも伸ばせますが…」

1 2 3 4 NEXT
早稲田大学
大田尾竜彦
佐藤健次
明治大学
帝京大学

ラグビーの前後の記事

ページトップ