猛牛のささやきBACK NUMBER
難病と闘いながら守ってきたショートからセカンド転向…オリックス優勝の“陰の立役者”安達了一(33)が明かした本音とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/12/10 11:04
難病と闘いながらもショートの座を守り抜いてきたオリックス安達了一。今季は19歳・紅林の台頭もあってセカンドにコンバートされた
「(ショートとは)角度が違うので難しさはある」というセカンドもそつなくこなし、紅林にも積極的にアドバイスを……と言いたいところだが、安達のほうから守備位置の助言などをすることはあっても、紅林のほうから聞いてくることはないという。
「絶対ないです。あいつは天然系なんで。(吉田)正尚系なんで(笑)。それが逆にいいんじゃないですか。考え込まない。常に自分のペース。だからいいんですよ。マジでうらやましいです。自分はすごく考えてしまうんで。19歳で、すごいと思います。自分が19歳の頃なんて、大学でまだ試合に出てもいなかったですから」
「何を考えてるかわからない」と苦笑しながらも、14歳下の大器を畏敬の念を持って温かく見守る。
シャイで気遣いの人、中嶋監督と似てる?
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試合前の練習中、中嶋監督は投手、野手関係なくいろいろなところに足を運んで選手に声をかけるが、中でも一番よく話しているのが安達だ。監督が安達のもとに寄っていき、2人でしゃがみこんで話している姿をよく見かけた。
コンバートはしたが、変わらず頼りにしているぞという意思表示、というのは考えすぎだろうか。
純粋に考え方や野球観が合うのかもしれない。話すのは作戦面のことが多いと安達は言う。
「例えば、前の日の試合のことで、『あのカウントになったらエンドラン(のサイン)、絶対出ると思いました』みたいな話をしたりします。ほとんどが他愛のない話ですけど、めちゃくちゃ話しやすいですよ」
CS第3戦の9回裏に、小田にバスターのサインが出た時も、安達は「すごいな。でもありだな」と思ったという。
日本シリーズ進出を決めたあと、胴上げを嫌がって逃げ回る中嶋監督を、追いかけ回して捕まえたのは安達だった。
シャイであまり前に出ることを好まないが、内に熱いものを秘めている、そんな性格がどこか似ている。周囲がよく見えていて、気遣いの人、というのも共通する。
ショートにいてもセカンドにいても、安達は何かを察するとすぐにマウンドに行き、投手に一声かける。それが絶妙なタイミングなのだ。
「ピッチャーの様子であったり、ボールの感じであったり、なんかおかしいなと思ったら行きますね。間を取りにいくだけで、全然たいしたことは言わないんですけど」
さりげなく。しかしそこには強い思いがある。
「行かなくてやられたら、後悔するじゃないですか。行っとけばよかったって思うのが嫌なので。だから行くんです」
今年はそうした場面で、サードの宗佑磨がチラチラと安達のほうを見てきた。
「そういう時は宗に行かせます。目が合ったら、『行け』って合図して。そういう(マウンドに行く)人が増えれば助かるし、若いやつに伝えていかないといけないので」