猛牛のささやきBACK NUMBER
難病と闘いながら守ってきたショートからセカンド転向…オリックス優勝の“陰の立役者”安達了一(33)が明かした本音とは?
posted2021/12/10 11:04
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
今季、オリックスは25年ぶりのパ・リーグ優勝を果たし、記憶に残る数多くの名場面を残した。その劇的なシーンの裏には、職人・安達了一の技があった。
CSファイナルステージ第3戦では、9回裏に小田裕也がサヨナラバスターを決め、劇的に日本シリーズ進出を決めたが、そのお膳立てをしたのが安達だった。小田の前に無死一塁で打席に立ち、強攻を成功させて無死一、二塁とチャンスを広げて舞台を整えた。
また、リーグ優勝を引き寄せる大きな1勝となった10月25日の楽天とのレギュラーシーズン最終戦。9回表1死二、三塁の場面で、2ランスクイズを決めたのも安達だった。あの時、二塁から俊足を飛ばしてホームに還った後藤駿太はこう語っていた。
「無茶してでも絶対に行ったろう、とは思っていなくて、三塁側に転がったら狙える、と思っていました。安達さんがいいところに決めてくれたから」
安達は「2ランは狙ってなかったですよ」と笑ったが、打球をきっちりと三塁方向に転がし、後藤を生還に導いた。
常に「チームのために」が最優先。決して派手な役回りではなく、お立ち台に上がることも少ないが、勝利の陰には安達がいる。
ショートからセカンドへコンバート
プロ10年目、33歳で迎えた今季は、安達にとって転機の年となった。プロ入り以来守り続けてきたショートから、セカンドにコンバートされたのだ。
開幕に出遅れていた安達に代わり、開幕戦でショートを任されたのは高卒2年目の19歳、紅林弘太郎だった。
紅林を抜擢した中嶋聡監督は当初、「紅林はすぐにへばるだろうから、安達が戻ってきたら併用にする」つもりだった。だが、失敗しながらも打たれ強く前を向く紅林の姿を見るうちに、「あれ?こいつは行けるのかな」と考えが変わった。セカンドのほうが体への負担も軽減されるだろうという配慮もあり、5月以降、安達をセカンドにコンバートし、紅林をショートに据えた。
ショートは安達が、何があっても守り続けてきたポジションだった。