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真夏の砂漠250km「完走率は47%」…なぜ元保育士ランナーは“世界で最も過酷なサハラマラソン”に挑戦したのか?
posted2021/11/29 11:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Tomosuke Imai
「サハラマラソン」――。ボストンでもニューヨークでもロンドンでもなく、あまり聞きなれない名前のマラソン。このレースは、42.195キロを走るのでなく、100キロでもない。サハラ砂漠を250キロ、7日間かけて走破する“世界で最も過酷なマラソン”と言われているレースである。今年も10月に開催され、世界から672人が出走した。52.8度という高温と乾燥に苦しみ、完走率は47%(例年は95%ほどだという)、50代のフランス人男性が亡くなるほどの厳しさだった。
そこで、女子総合2位・準優勝を果たしたのが、尾藤朋美さんだ。
彼女は、なぜサハラマラソンに挑戦し、どのように走破したのだろうか――。12月3日にアブダビで開催されるスパルタンレースを前に、尾藤朋美さんに話を聞いた(全2回の1回目/#2へ続く)。
◆◆◆
キッカケは2018年。とある忘年会での出会いだった。
「この子、サハラ砂漠、250キロを走ったんだよ」
そう紹介されたのが、ヤハラリカさんだった。2017年4月にサハラマラソンを完走していた。
「その話を聞いた時、『砂漠を走るって何ですか?!』って、すごく興味が湧いたんです。ヤハラさんの横でその話をずっと聞いていたら面白そうだったので、『砂漠を走りたい』って言ったんです。リカさんは『こんな話をして走りたいって言った子、初めてだよ』って驚いていましたね(苦笑)。でも、翌日にはSNSで『サハラ砂漠走ります』『世界一になります』と宣言しました」
しかし、その宣言に周囲の反応は「えっ、何、言ってるの?」という感じだった。無理もない。
尾藤さんは2018年4月にサブ4(※フルマラソンを4時間以内で走りきること)を達成したばかりで、ランナーとしてはキャリアが始まったばかり。250キロの距離を、しかも砂漠で走ることなど、周囲の誰もイメージできなかったのだ。
元保育士トレーナーに”火をつけた”意外な理由
尾藤さんは、高校で始めたチアリーディングを関東屈指の強豪校である帝京大学でも続け、卒業後は保育士になった。その後、友人の紹介で始めたトレーニングにハマり、パーソナルトレーナーに転身。ブランディングを兼ねてランニングを始めた。