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真夏の砂漠250km「完走率は47%」…なぜ元保育士ランナーは“世界で最も過酷なサハラマラソン”に挑戦したのか? 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byTomosuke Imai

posted2021/11/29 11:00

真夏の砂漠250km「完走率は47%」…なぜ元保育士ランナーは“世界で最も過酷なサハラマラソン”に挑戦したのか?<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

今年2月にサハラ砂漠で開かれた“サハラマラソン”。世界で最も過酷と言われるこのレースで、ある日本人選手が準優勝の快挙を成し遂げた

 しかし、元保育士の肩書だけでは弱く、ある時大好きだったお笑い芸人の藤森慎吾がサブ4を達成してニュースになったのを見て、すぐにサブ4に挑戦した。しかし、サブ4を達成しても思った以上に周囲から認めてもらえない。あとで「芸能人だから注目された」という現実に気が付いた。サハラマラソン挑戦の宣言をした後は、マラソンでサブ3を目指しつつ、富士五湖ウルトラマラソン118キロで女子総合優勝するなど、とにかく多くのレースに出場し、経験を積んだ。

「2019年のウルトラマラソンで優勝して、『あれ? 私、長い距離イケるかもしれない』と思って(笑)」

 2019年は出るレースのほぼ全てで結果を残し、尾藤さん曰く「一番のおめでとうラッシュ」になった。ところが、2020年以降、出場予定のサハラマラソンがコロナ禍の影響で延期になり、同時に多くのレースが延期、中止になった。それでも九十九里浜でのトライアスロン大会で女子総合優勝を果たし、今年3月には名古屋ウィメンズマラソンではサブ3を達成。今回のサハラマラソンの2週間前に開催された新潟でのスパルタンレースでも女子総合優勝を果たすなど、力を磨いてきた。

マラソン直前にドクターストップ「棄権したほうがいい」

「本当にサハラを狙うなら、直前にスパルタンみたいな消耗が激しいレースは出ない方がいいと言われたんです。それでも出場して、足とかつりながらもラッキーなことに優勝できたんですよね。サハラマラソンに向けていい自信になったと思っていたんですが……」

 ただ、優勝の代償は大きかった。足に痛みを感じて、病院に行くと、両足肉離れ・両足骨挫傷と診断された。シップ程度だと思っていたのに、帰りはギプスまでつけられ、医者からは「しばらく絶対安静にしてください。レースは棄権した方がいい」とピシャリと言われた。

「正直、ビビりました(笑)。でもクラウドファンディングで募集までしていましたし、もうここまできたら這いつくばっても走ろうと思いましたね。そこから毎日1万円ぐらいする治療院に通って酸素カプセルに入って、駅からちょっとした距離でもタクシーに乗りました。早く治さないといけないって必死で」

 そうして、尾藤さんはドクターストップを振り切り、サハラマラソンに出場するためにフランス・パリへ飛んだ。

「サハラマラソンとは?」参加するために“100万円”

 サハラマラソンは直接モロッコからエントリーすることもできるが、尾藤さんは初出場で、現地集合は不安ということでパリ集合・パリ解散を選択した。

 ちなみにレースのエントリー費は、3740ユーロ(約45万円)ほどで、パリからモロッコまでのチャーター便の費用などが含まれている。それ以外に、パリまでの往復航空券、PCR検査費用、食料調達などマラソン参加には占めて100万円ぐらい必要になる。決して安くはないレース資金は、主にクラウドファンディング(106万円)でまかなった。

【次ページ】 サハラマラソンの必携品とは?

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#尾藤朋美

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