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《三冠馬のラストラン》ディープとオルフェは有終の美、ブライアンはまさかの結末…JCでターフを去るコントレイルの運命は?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byJIJI PRESS、BUNGEISHUNJU
posted2021/11/26 17:04
昨年の菊花賞を制して“無敗の三冠馬”となったコントレイルだが、その後は2着、3着、2着と未勝利。偉大な父・ディープインパクトと同様に引退の花道を飾ることができるだろうか
97年から新冠のCBスタッドで種牡馬となったが、翌98年9月27日、胃破裂を発症し安楽死の措置が取られた。まだ7歳という若さで、産駒を2世代しか残すことができなかった。残念ながら、産駒から重賞勝ち馬は出なかった。繁殖牝馬になった産駒はいるものの、後継種牡馬はいない。
ディープは「ようやく完成された」有馬記念で引退
次に三冠馬となったのは、2005(平成17)年に、シンボリルドルフ以来21年ぶり、史上2頭目の無敗の三冠馬となったディープインパクトだった。
3歳時の有馬記念でハーツクライをとらえ切れず2着となり、初めての敗戦を経験するも、翌06年、阪神大賞典、天皇賞・春、宝塚記念をディープらしい圧勝劇で制し、いささかも衰えがないところを見せつけた。
しかし、凱旋門賞では3位入線後、検体から禁止薬物が検出されて失格に。
その年限りでの引退が発表されたのは、凱旋門賞から10日後の10月11日。薬物検出が明らかになる前のことで、感覚としては「電撃引退」だった。
帰国初戦のジャパンカップで汚名返上の復権を果たし、引退レースとなった有馬記念も、4コーナーで前を一気にかわす圧巻の競馬で優勝。全14戦に騎乗した武豊は、「それまでは勝ったレースでも、道中掛かったりと、どこかに上手くいかなかったところがあったのですが、このレースは完璧だった。ようやく完成されたと思ったら、最後ですものね」と、寂しそうに話していた。
種牡馬としても現役時代さながらの無双ぶりで、2012年に初めてリーディングサイアーとなり、19年に世を去ってからもその座を保ちつづけ、今年も当確である。産駒には、前出のコントレイル、先週のマイルチャンピオンシップでラストランを飾ったグランアレグリアなど、ここに書き切れないほどのGIホースがいる。
最後まで爆発的な走りを見せたオルフェーヴル
平成に入って3頭目、コントレイルの前に三冠馬となったのは、東日本大震災が発生した2011(平成23)年のオルフェーヴルである。
この馬は、デビュー3戦目の京王杯2歳ステークスで10着に敗れている。ふた桁着順を経験したあとに三冠馬となったのは、歴代の三冠馬のなかでこの馬だけだ。4歳だった2012年の阪神大賞典の3コーナーで逸走したり、圧勝かと思われた同年の凱旋門賞の直線で急に失速したり、ほかのレースでのゴール後、鞍上を振り落としたりと、気性の難しい馬だった。その激しさが、走りの爆発力につながっていたのだろう。
13年の凱旋門賞でも2着となり、次走の有馬記念がラストランとなった。そこを直線で独走態勢に持ち込み、8馬身差で圧勝。翌年からの種牡馬入りに向けて格好のアピールになったとして、高く評価された。