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《打点王》石井一久監督と約束した推定100万円(!?)の“スニーカー”よりも⋯楽天・島内宏明が明かす長打増加の“本当の理由”
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2021/12/01 11:03
今季打点王を獲得した楽天・島内宏明。打点量産の背景に、打席での「形」があった
「どんな状況でも集中力を持って打席に立てたことですかね。今年は得点圏もそうですけど、ランナーがいる場面では『繋ごう』っていうより『還そう』って強く思うようにしたし、ランナーがいない時でも出塁をすごく意識できたんで。まあまあしっかりできていた年なんじゃないかなって思います」
場面によって変幻自在の“打撃フォーム”
打点を量産できた集中力は、打席での「形」でも表現されていた。
シーズンでの島内の打撃映像を見返すと、あることに気づかされた。ランナーの状況、ピッチャー、カウントなどによって、打撃フォームを変えていたのである。
バットを寝かせて構えたり、立てていたり。下半身の使い方もノーステップがあれば、脚を少し上げたり、摺り足のように移動させたりと多様だった。シチュエーションに応じ上下の動作を組み替えることで、打席での適応力を発揮していたのである。
島内は少し空を見つめてから、意思を示す。
「そこは確かにあるかもしれないです。タイミングの取り方は他の選手より多いと思うんで。あり過ぎて打てない時もあるんですけど、引き出しが多いに越したことはないんで」
タイミングは、日頃から「バッティングで一番大事」と挙げるほどの重要項目でもある。チャンスで強かった一方で、シーズン打率となると例年より低い2割5分7厘に終わった。
「まあ、ズレはありましたから。そのなかでもうまくやれたほうだとは思いますけど」と反省点も含ませていたほどである。
「あ……」
島内が思い出したように訂正を促す。
「でも、例年に比べて僕、寝かせてないです」
前述のバットの位置を指していた。昨年までも、肩で担ぐように構えたところからバットをトップの位置へと移行させ、スイングしていたように見えた。それが今季は違っていたのだと、島内は言うのである。
「軽い力で飛ばすって方法を、ちょっとわかったっていうか」
ポイントは左肩。本人の解説によると「入れる」感覚なのだという。