「バットを『寝かせる』でも『立てる』でもないですよ。『入れる』です。言葉で説明するのは難しいですけどね、ふふふ」

　打撃フォームを見ればわかるが、それはおそらく、左肩を外側へと押し出すイメージなのだろう。そうすると、寝かせたバットは自然と立つ。オープン戦まではその動作を体に染み込ませようとしていたが、その過程で腰にも『入れる』感覚が身に付いた。これはどちらかといえば、外側に押し出すというより、捻るような動きに近いのかもしれない――。

　島内とそんな問答を繰り返す。「『入れる』っす、ははは」と、穏やかに再度念を押しながらも核心を説いてくれた。

「打球の飛ばし方ですよね。軽い力で飛ばすって方法を、ちょっとわかったっていうか。肩を意識してもよくない時期が出てきて、そこで腰をちょっと入れる時もあったんですね。『今日は肩が合わんから、腰にしよう』とか、意識するポジションを決めると、いい時はハマってくれましたよね。まあ、いろいろあるんす、パワーの出し方が。難しいですけどね、そんな感じです、はい」

　その賜物として打点王のタイトルを獲得し、自己最多となるチームトップの21本塁打と、長打の増加にも結び付けた。

「100打点は無理っすわ（笑）」

　プロ10年目。節目のシーズンでの爆発。

　それら今季の実績も、島内からすれば過去の話として消化されている。

「打点王を獲れたからこそ、来年が大事だと思っているんで。調子に乗ることなく、引き続き結果を残したいなって思いますけどね」

　新たなステータスを手にし、不動の中軸となったキングへの信頼度はますます高まる。

　来季は100打点。誰だって期待してしまう。

　島内が即座に切り返す。

「100打点は無理っすわ（笑）」

　すでに、調子に乗っていないようだ。