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立浪和義「真面目の青」と新庄剛志「エネルギッシュな赤」…臨床心理士が就任会見から見た“新監督の決定的な違い”
text by
岡村美奈Okamura Mina
photograph byKYODO
posted2021/11/23 17:04
この秋、就任が発表された立浪和義新監督(中日)と新庄剛志監督(日ハム)。臨床心理士が就任会見からみた“新監督の決定的な違い”とは
新庄監督は、阪神時代に伸び悩んでいた時、当時の野村(克也)監督が彼に伸び伸びとプレーさせ「野村監督のおかげで力を引き出すことができた」と述べているという。米メジャーへ移籍し、日本に戻り日本ハムに入ってから“新庄劇場”と呼ばれるほどのエンターテインメントを見せ、チームとしての成績も浮上させた。選手の力を“引き出す”と彼が表現するのは、自分がそのように成長してきたからだろう。
《見せたいもの》「まとまったチーム」と「チーム作りのプロセス」
監督として、世間に、ファンに見せたいものも違うように感じられた。
立浪監督はある程度、形作られまとまったチームを披露しようとし、新庄監督はチーム作りのプロセスから見せたいのではないだろうか。
立浪監督は「魅力的なチーム」「強いチーム」と表現したように、選手よりチームに焦点が当てられている。勝てるだろうチームを作り上げてシーズンに臨み、勝利する姿をファンに見せる。またプロ野球の監督はそういうものだろうとも思う。
新庄監督は「チームにピッチャー3人、野手4人、このタレントを作り上げていけば楽しいチームになるし、そういうタレントが生まれるっていうことは、全国に名前も背番号も顔も名前も覚えてもらえるんで、その時は強くなっていると思うので、そういうチームを作っていきたい」という発言でわかるように、選手が注目されていく過程、チーム作りのプロセスを見せていこうとしているようだ。チームという枠組はあれど、中にいる選手たちにスポットライトが当たるように考えているのだ。それはAKB48の1人1人にファンがついて有名になり、トップアイドルグループに上り詰めていくまでを連想させるものだ。
同時にこれは期待されることからくる心理的効果を狙える。
新庄「タレントを作る」に隠された“意外な心理的効果”
人は他者に期待されると、期待された通りの結果、成果を出す傾向があるといわれる。「ピグマリオン効果」だ。この効果を意図しているかどうかはさておき、注目され、期待されることからくる気持ちの高まりや向上心、頑張ろうという意識などの効果は、新庄監督が身をもって理解していることだろう。
タレントを作る、スター候補を育てるという言葉とともに、「全員がドラフトでかかった選手と思っているので、レギュラーなんか一人も決まっていません」と話し、誰もがそのチャンスを狙える立場にあること、そして1人1人が見られているのだと選手に期待させるのも忘れない。スターが育つまでは自身が目立つことで話題になり、世間の関心を高め、チームの人気を取り戻す。チームの人気が上がることで、選手の帰属意識ややる気も高まるはずだ。