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菊池雄星、大谷翔平、佐々木朗希…なぜ岩手から“野球界の怪物選手”は生まれるのか? 現地取材で導く「3つの理由」 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byGetty Images/Nanae Suzuki/JIJI PRESS

posted2021/11/19 17:03

菊池雄星、大谷翔平、佐々木朗希…なぜ岩手から“野球界の怪物選手”は生まれるのか? 現地取材で導く「3つの理由」<Number Web> photograph by Getty Images/Nanae Suzuki/JIJI PRESS

菊池雄星、大谷翔平、佐々木朗希など、近年岩手から野球界のスターが生まれ続けている

「2009年に花巻東は(菊池という)抜きん出た投手を中心に気心のしれたメンバーが集まり、球史に残る快進撃をみせ、それが『岩手からでもやれるんだ』という自信を多くの人に植え付けました。そこで野球指導者、関係者、選手の意識が変わったように思います。また指導者がインターネットなどで野球の指導についての情報を得ることができるようになり、その点の地域格差が埋まったことも影響しているように感じます。環境面でみると、やはりKボールへ繋がる中学軟式、そしてリトルシニアの存在は大きいです」

 菊池雄星がプレーしていた2006年ごろまで、岩手にはリトルシニアは4チームしかなかったが、その後、少しずつチームが増え、現在は10チームまでになった。これは全国的に見ても多い。

理由2)プロ選手を多数輩出している”Kボール”とは?

  そしてもう一つ、リトルシニアとともにこの20年で増加したのが中学3年生を支えるKボールだ。

「Kボールって何?」

 そう思われる方も多いと思う。

 Kボールとは中学で軟式野球をプレーしていた子供たちが、高校でスムーズに硬式野球に移行できるようにと2000年に開発されたボールのことで、素材は軟式、大きさや重さは硬式ボールと同じ。試合では硬式用のバットを使用する。岩手は全国でもKボールが盛んな地域で、2001年にリーグが創設され、今年20年の節目を迎えた。

 中学3年生は夏の中学総体を終えると、地区のKボール選抜チーム入りを目指す。選抜と名がつくように希望者全員がプレーできるわけではない。地区によっては厳しい争いになる。2020年度は地区選抜15チームが登録されているが、彼らは県大会、東北大会を戦う。その後、各地区から推薦を受けた選手たちによって県選抜チームが作られ、2カ月ほど練習やオープン戦を行った後、岩手チームとして全国大会に臨むという。

 ちなみに岩手県のKボール連盟のホームページには「中学生に多くの野球経験の機会を。より高いステージでの活躍を」とあるが、その言葉通り、ロッテの佐々木朗希もKボールの出身で、オール気仙では夏に参加した岩手大会で優勝、東北大会で準優勝し、東日本大会では当時の自己最速となる141kmを計測している。

 菊池や大谷はシニア出身だが、Kボールも佐々木を始め、プロ選手を多数輩出しているのだ。

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