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大谷翔平の率直な評価は? 「2年後には史上最高給の選手に」だけではない、4人のMLB著名記者が語った本音とは 

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/11/19 06:00

大谷翔平の率直な評価は? 「2年後には史上最高給の選手に」だけではない、4人のMLB著名記者が語った本音とは<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

“二刀流”で2021シーズンを完走した大谷。目の肥えたMLB記者たちの評価は?

誰ひとり想像もしなかったことだった

「バット1本で野球を変えてしまうとは」
トム・ベルドゥーチ(『Sports Illustrated』シニア・ライター)

 ベーブ・ルース以降、投打両方で挑戦することさえ困難だった大リーグで、大谷がハイレベルなパフォーマンスを存分に発揮している今季は、史上最も印象に残るシーズンの一つになるでしょう。

 今季の大谷が抜きん出た要因について多くの論評が溢れていますが、単純に、怪我からの回復が大きいでしょう。昨季は、'19年に手術をした左膝がまだ完全に癒えていない状態で、打撃動作でもっとも重要な軸足に十分な力をかけることができないでいたと思います。それをオフの取り組みで改善して、しっかり重心を乗せた軸足からの体重移動がスムーズになった。それと呼応するように構えるバットの位置も上がった。大谷がバットのトップを保って構える姿をみれば、身体の中心でボールを待つイメージができているとわかります。呼び込んで捉えた打球はバックスピンがよりかかって、アーチを描いて高く遠く飛びます。柔靭な下半身と改良した構えが本塁打量産の要因でしょう。

 いまや大谷は、1918年のベーブ・ルース以来となる103年ぶりの二桁勝利&二桁本塁打が視野に入っています。もちろん偉業のもう片方の投球についても、'18年に受けた右肘の靱帯修復手術からの復調があったことは言うまでもないでしょう。

 大谷の良き理解者であるジョー・マドン監督は「最高の大谷は二刀流でこそ見られるものだ」と語っています。投手と打者の追求という強い目的意識で大リーグに挑戦し、今、その両方で見る者を魅了している彼にもし、どちらか一方の選択を求めるのなら、それは彼から野球への愛情を奪うことと同じだと思います。

 ゲームに臨む大谷を見ていてつくづく思うのは、「人は意欲と情熱を注げることに最大限の力を発揮することができる」ということです。彼にはこのまま投打での出場をずっと続けてほしいと思います。

 1919年にワールドシリーズでの八百長試合が発覚してホワイトソックスの選手が永久追放となった“ブラックソックス事件”で球界全体に暗雲が垂れ込めました。その頃に豪快な本塁打で球界を救ったのがベーブ・ルースでした。打ちまくるルースは離れかけたファンの注目を集めて、野球における攻撃の考え方さえ変える伝説的な存在となりました。

 それから100年を経て、トレーニング法や技術などあらゆる面で進化した時代にあって、一選手がバット1本で野球に刺激的な変化をもたらすなんて誰ひとり想像もしなかったことです。大谷が大リーグに何を遺すかはこれからの活躍次第ですが、すでにはっきりしていることが2つあります。“ショウヘイ・オオタニ”の名前は、現代野球における二刀流の祖として語り継がれていくこと。もう1つは、これから二刀流に挑む者はルースではなく大谷と比較されるということです。

(interview by Hideo Kizaki)

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