Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
大谷翔平の率直な評価は? 「2年後には史上最高給の選手に」だけではない、4人のMLB著名記者が語った本音とは
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byNanae Suzuki
posted2021/11/19 06:00
“二刀流”で2021シーズンを完走した大谷。目の肥えたMLB記者たちの評価は?
投打両面で解き放たれたことが大きかった
「兄ジャスティンも彼との対戦が大好き」
ベン・バーランダー(『FOX SPORTS』アナリスト)
僕もカレッジとマイナーリーグでプレーし、カレッジ時代には投手と野手の両方をやろうとしたことがあるけど、どちらもハイレベルでこなすのは非常に難しいとすぐに気付かされた。そんな経験から言わせてもらえば、今の大谷はほとんど不可能を可能にしていると思う。世界最高レベルのリーグで、投打両面でトップ級の成果を残しているというのは本当にとてつもないことだよ。
日本でプレーした経験がある友人のスティーブン・モヤ(オリックス)やディーン・グリーン(元ヤクルト)から、アメリカに来る前から彼のことは聞かされていた。
「マウンドで100マイルの球を投げ、打席では500フィートの打球を飛ばすショーヘイ・オータニというとんでもない選手がいる」ってね。実際にそのプレーを見て、すぐに投打両面でこれは本物だと分かったよ。
今季の成功の理由は、健康を保っていることと、あとは投打両面で解き放たれたことが大きかったのだと思う。これまでは“登板翌日は休み”とか、“先発の日は打たない”とかいろいろ制約が設けられてきたけど、今季は真の意味で二刀流になった。あれだけの才能を持つ選手がハッピーに感じてプレーしたら、恐るべき結果が導き出されるということだ。
先日のオールスターで初めて大谷と対面したんだけど、握手して、「ベースボールを盛り上げてくれて、このスポーツに違う文化をもたらしてくれてありがとう」と伝えたんだ。僕たちの会話には一平(水原通訳)が間に入ってくれたんだけど、「メジャーで最高のスイングを持っているのは誰だと思う?」という僕の質問に対して、訳を聞くまでもなく「マイク・トラウト!」と即答した。大谷は英語も上達しているとそのときに確信できたよ。
大谷には今後も二刀流を続けてほしいと思うし、メジャーリーグは彼の挑戦を必要としていると感じている。何より、彼自身がそれを望んでいて、楽しんでいるんだから、もちろん継続するべきだ。今季前半はリーグ最高の打者で、後半戦では最高の投手と評されるべき成績を残しているんだから、もう誰も文句は言えないはず。どちらかを選ぶ必要なんてないと考えているよ。
兄のジャスティンともよく大谷の話をする。一度、兄に「大谷の弱点は何処なんだい?」と聞いたら、「幾つか得意ではないコースがあって、中には1つ弱点と呼べる場所もあるんだけど、彼はそれをカバーするのが上手なんだ」と話していた。大谷を打席に迎えた際にはまるで頭の中でチェスをやるような感じになるらしくて、だからこそ兄は大谷との対戦が大好きなんだと思う。兄が故障から復帰して、また大谷と対戦したらどちらを応援するかって? うーん、難しい質問だな(笑)。兄は家族の一員で、僕のアイドルでもあるから、やはり兄を応援するとは思う。ただ、兄が交代してマウンドから降りたら、僕はすぐにまた翔平の大ファンに戻るけどね。
(interview by Daisuke Sugiura)