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《エリザベス女王杯でGI2勝目なるか》三冠馬を圧倒した快速馬レイパパレ、馬産地の情熱がつないだ「100年の血脈」を辿る 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2021/11/14 06:00

《エリザベス女王杯でGI2勝目なるか》三冠馬を圧倒した快速馬レイパパレ、馬産地の情熱がつないだ「100年の血脈」を辿る<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

春の大阪杯では、三冠馬コントレイルや短距離女王グランアレグリアに圧勝。今週末のエリザベス女王杯でふたつ目のタイトル獲得を狙う

 引退した年にノーザンファームで繁殖牝馬となり、サンデーサイレンスを配合。翌年1番仔の牡馬ダブルティンパニーを産み、そして、'03年に産んだ父クロフネの牝馬が、レイパパレの母シェルズレイである。

 シェルズレイは桜花賞5着、オークス7着、秋華賞5着と、牝馬三冠でまずまずいい成績をおさめた。GIを勝つことはできなかったが、チューリップ賞とローズSで僅差の2着になるなど、重賞での好走歴がある。

「もう少しでGIにも手が届きましたね。競走馬としても、繁殖牝馬としての最初の数年も、金子さんと吉田社長との共有でした。産駒も3番仔までは共有でしたが、4番仔のシャイニングレイから共有が解消されてノーザンファームの所有となり、5番仔と6番仔はセレクトセールに上場されました」

 父ディープインパクトのレイパパレはシェルズレイの8番仔だ。ホープフルS(GII)、CBC賞(GIII)などを勝った前出の4番仔シャイニングレイと同じクラブ法人キャロットファームの所属馬である。実は、そのキャロットファームの現在の代表が秋田なのである。つまり、秋田は、自ら見いだした牝馬の孫娘で、21年後、GIの栄冠を手にしたのだ。

レイパパレの牝系は10代母のフロリースカツプに遡る

 このように末裔がビッグレースを勝つと、その祖先が遡って再評価される。

 レイパパレの牝系を遡ると、10代母にフロリースカツプの名が見える。岩手の小岩井農場により、1907年にイギリスから輸入されて栄えた「小岩井の牝系」の牝祖の1頭である。ウオッカの11代母でもあり、自身が日本に来たちょうど100年後に11代先の産駒であるウオッカがダービーを勝つというドラマを見せた。スペシャルウィーク、メイショウサムソンも末裔だ。

 同時に輸入されたビユーチフルドリーマーにはニッポーテイオー、アストニシメントにはメジロマックイーン、プロポンチスにはアイネスフウジンといった子孫がいるなど、「小岩井の牝系」は、今なお日本で大きな影響力を持っている。

 同じフロリースカツプ系でも、上記のウオッカ、メイショウサムソン、スペシャルウィークの3頭の系統とレイパパレの系統は、100年ほど前に分かれている。前記3頭はフロリースカツプの娘の第四フロリースカツプの末裔で、レイパパレはその妹の第九フロリースカツプの末裔だ。姉の系統ほど多くの活躍馬は出ていない。それがこうして現代にまで繋がれたのは、当時のホースマンの情熱があったからだ。

【次ページ】 「出てこなくてよかった」三冠牝馬の陣営も戦慄

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