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《エリザベス女王杯でGI2勝目なるか》三冠馬を圧倒した快速馬レイパパレ、馬産地の情熱がつないだ「100年の血脈」を辿る
posted2021/11/14 06:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
2000年5月15日、当時ノーザンファームの場長だった秋田博章は、新冠の日高軽種馬共同育成公社で行われたトレーニングセールの会場にいた。代表の吉田勝己の指示で、2歳馬を探しに来ていたのだ。
調教供覧を見た秋田の目に、馬体と動きが非常によく映った鹿毛の牝馬がいた。
父ウイニングチケット、母ナムラピアリス。浦河・蠣崎牧場の生産。
「ストライドが大きくてバネがあり、手がすごく伸びてくる馬でした。これは走りそうだな、と。カタログのブラックタイプを見ても、近親にJRAの大きなレースの勝ち馬がほとんどいなかったので、真っ白でした。これなら500万円くらいで落ちるだろうと思っていたのですが、結局、700万円から800万円で落札したと記憶しています」
それがオイスターチケットだった。今年の大阪杯を無傷の6連勝で圧勝したレイパパレの2代母(母方の祖母)である。
「少し体高があって、バランスの取れた馬でした。繁殖牝馬としての将来性に期待したわけではなく、競走馬としての資質を見込んで購入しました。まさか、ここまで牝系がひろがるとは思いもしませんでした」
「もう少しでGIに…」母と祖母の悲願を成就
オイスターチケットのプロフィールをデータベースで見ると、金子真人の所有馬として、栗東・松田国英厩舎に所属していたことがわかる。そこには記されていないが、同馬は金子と吉田勝己が半分ずつ権利を持つ共有、いわゆる「半持ち」だった。
「吉田社長が金子さんに『半分どうですか』と話を持ちかけました。クロフネなどもそうでした。当時は金子さんもそれほど頭数をお持ちではなかったので、少しでも多く馬を所有できるよう、そうしたんです」
蠣崎牧場の生産馬なので「カキ=オイスター」と、父の馬名にある「チケット」を組み合わせてオイスターチケットと名付けられ、セリにもこの名で出ていたという。
'00年7月16日、小倉芝1000mの3歳新馬戦(旧馬齢)でデビューし10着。2戦目、小倉芝1200mの新馬戦で初勝利を挙げた。5戦目、札幌芝1200mのすずらん賞で2勝目をマークし、次走、京都芝1400mのGIII、ファンタジーSで3着となっている。その後、桜花賞は6着と健闘したが、オークスでは14着に惨敗。それを最後に現役を退いた。
「2代母にトウショウボーイ、母にウイニングチケットを配合しているので、もうちょっと距離に融通が利くのかと思っていたのですが、前向きで、スピードが豊富でしたね」