熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
カズが生き抜いたブラジル、メッシを生んだアルゼンチンの育成より… 日本サッカーの参考になるのは《実はウルグアイ》なワケ
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJMPA(2)/Getty Images
posted2021/11/14 17:02
ネイマール、メッシ、スアレス。南米各国が誇るストライカーはそれぞれの育成環境の上で育まれている
「バビー」は英語の「ベビー」のスペイン語読みで、「小さなフットボール」を意味する。
フットサルとほぼ同じコートでGKを含めて6人でプレーするが、フットサルとの違いはスライディングタックルやボディコンタクトが許されており、ボールがタッチラインを割った際にはスローインでボールを投げ入れること(注:フットサルではキックイン)。ルールがフットサルよりもフットボールに近く、技術や状況判断力を磨くだけでなく、競り合いの強さも培うことができる。
アルゼンチン代表のエースであるメッシ(PSG)ら選手のほとんどが、小学生年代にこのバビーフットボールを経験している。コートはたいていコンクリートで、膝や肘を擦りむくのは日常茶飯事。試合をすると、たいてい怪我人が出る。それでも、まだ小さな子供たちが激しく競り合い、何度倒されてもまた立ち上がって相手に向かっていく。その気迫はすさまじい。
マラドーナはいかにして育ったか?
この年代でブラジル人がプレーを楽しむことを主眼に置いているのに対し、アルゼンチンでは早くも「戦い」として捉えている。
ただ、骨折など大きな怪我をすることもあるので、稀にバビーフットボールを奨励しない指導者もいる。マラドーナは、少年時代の指導者の意向で例外的に経験していない。
ではそのマラドーナは、どのように育ったのか。
フットボールが大好きな父親から手ほどきを受け、父親が隣人を集めて作ったアマチュアチームで6歳からプレーした。8歳のとき、親友がアルヘンティノス・ジュニオルスのアカデミーの入団テストを受けて合格し、後日、この友人の推薦で自分も入団テストを受けて合格した。
小柄だったがテクニックと創造性がずば抜けており、驚異的なプレーを連発。たちまち、「天才児がいる」と有名になった。このチームにはマラドーナ以外にも優秀な選手がいて非常に強く、150試合以上負けなかったという。
マラドーナはアカデミーのカテゴリーを順調に昇格し、15歳でトップチームからデビューした。
アルゼンチンの育成年代の指導者は、「子供時代にバビーフットボールを経験することが、我々のフットボールのスタイルに決定的な影響を与えている」と言明する。