酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
12球団最多勝利の阪神(貯金21)が巨人(借金1)に連敗終戦… 《儲かるし盛り上がるCS》だが、納得性は改善できないのか
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/11/08 17:01
ロハスJr.が三振に切って取られた瞬間、シーズン77勝を挙げた阪神の2021年は終わった
2010年
ロッテ 143試75勝67敗2分 率.528(2.5)
2017年
DeNA 143試73勝65敗5分 率.529(14.5)
2010年のロッテは3位と言っても1位ソフトバンクとは僅差だった。2017年のDeNAは1位広島とは大きなゲーム差が開いていたが、それでも8つも勝ち越していた。
しかし今季の巨人は、1つとはいえ負け越しているうえに、首位のヤクルト、2位の阪神とは11ゲームも引き離されていた。もし巨人がファイナルステージでもヤクルトを下せば、史上初めてペナントレースで負け越したチームが日本シリーズに出場することになる。
由伸ジャイアンツにも似たような状況が
ただ、実はよく似たシーズンが最近あったのだ。2018年のセ・リーグでも高橋由伸監督率いる巨人は勝率.486、首位広島とは13.5ゲーム離された3位に終わったが、クライマックスシリーズのファーストステージでは2勝0敗でヤクルトを下し、ファイナルステージに進出。しかし1位広島に0勝4敗(広島のアドバンテージ1勝含む)で敗退した。なお高橋由伸監督はペナントレース終了後、退任を表明している。
今季の巨人は10月5日から16日まで、引き分けを一つ挟んで10連敗を喫した。一時は広島に迫られて3位の座も危うくなっていた。かろうじて3位でフィニッシュしたが、2018年以来の負け越しに終わった。
当然の結果として、原辰徳監督の責任論が沸き起こっていたのだが、ここから下克上で日本シリーズ進出、さらには日本一となった場合には、世間の評価はどうなるのだろうか。シーズン終了後に「大反省会」をやるつもりだったスポーツメディアも、振り上げたこぶしを下すようなことになるのか?
現在のCSに釈然としない思いを持つ人も多いのでは
たとえ負け越した巨人が日本一になったとしても、ルール上は何の問題もないことは強調しておきたい。それとともに、現在のクライマックスシリーズに釈然としない思いを持つファンが多いのもわかる。
ポストシーズンは確かに「下克上」のチャンスが担保されているが、多少波乱があったとしてもペナントレースの勝者が勝ち進むほうがすんなりいく。筆者は2018年ファイナルステージで巨人が敗退して「事なきを得た」という感じがした。
それを考慮しても、クライマックスシリーズは明らかに改善の余地がある。あまりにも勝率が低いチームが「日本一」になったとき、すべての野球ファンが納得するのだろうか?
もし新ルールを加えるとするならば……
例えば「3位チームは勝率5割以上なければクライマックスシリーズに進出できない」などの新ルールを加えることも考えられるだろう。
中にはクライマックスシリーズをやめて、シンプルな「リーグ優勝→日本シリーズ出場」に戻すべきだという意見もあるが、こんなに面白い試合が続くのに廃止するのはもったいないだろう。
筆者は以前、ポストシーズンの妥当性を高めるためには今の2リーグ制を改めて3地区制にし、MLBのように各地区の優勝チームとワイルドカードがポストシーズンを戦うべきだと書いた。
これはあくまで一案であるが――プロ野球をさらに面白くし、ポストシーズンを納得性の高いものにするために、ファンを巻き込んだ、広範な議論が起こってもよいと思う。