酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
12球団最多勝利の阪神(貯金21)が巨人(借金1)に連敗終戦… 《儲かるし盛り上がるCS》だが、納得性は改善できないのか
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/11/08 17:01
ロハスJr.が三振に切って取られた瞬間、シーズン77勝を挙げた阪神の2021年は終わった
半年にわたる長期のペナントレースの後に、1カ月の短期決戦で勝者が勝ち上がるトーナメント的な要素のある地区優勝決定シリーズ、リーグ優勝決定シリーズを行うことで、人々の注目をもう1カ月つなぎとめることができる。そして放映権ビジネスなど大きな収入を得ることができるのだ。
人気打開策でパは前後期制やプレーオフを
NPBでは、長く「人気がないほうのリーグ」だったパ・リーグが1973年から82年まで前後期2シーズン制を導入し、前期と後期の優勝チームがプレーオフを戦って日本シリーズ出場チームを決めた。これも「人気振興策」だったのだが、欠陥が多かった。
1年目の1973年は前期シリーズで優勝した南海が後期優勝の阪急を下したが、前後期を通算すれば、勝率は阪急が.616で1位、前後期ともに2位だったロッテが.588で2位、南海は.540で3位にすぎなかった。南海の野村克也監督は前期だけ頑張って後期は「死んだふり」をしていたと揶揄されたものだ。また1976、78年は阪急が前後期ともに優勝したために、プレーオフそのものがなくなった。プレーオフの人気も期待したほどではなかったので、10シーズンで打ち切りになった。
その後、2004年になってパ・リーグが上位3チームによるプレーオフを実施、2007年にはセ・リーグも追随してクライマックスシリーズが誕生したわけだ。これも、MLB同様「興行的意図」が大きいと考えられる。
下克上は敗れたチームのファンとしたら理不尽
確かにCSは好ゲームが多い。前述したように手の内を知るチーム同士が戦うから接戦になりやすいのだ。しかしながら、ペナントレースでは下位のチームが上位のチームを破る「下克上」は、特に敗れたチームのファンにとっては不満が残る。
ペナントレースの山あり谷ありの長丁場を戦ってやっと優勝したと思ったら、わずか数試合の結果で日本シリーズへの出場権を失ってしまう。理不尽だと思う人がいてもおかしくない。
かつてのパ・リーグの2シーズン制は、プレーオフを制したチームが前後期通算の優勝チームになった。前述の1973年は勝率3位の南海がパの優勝チームとなったが、今のプレーオフはペナントレース勝率1位のチームをリーグ優勝とし、クライマックスシリーズを勝ち上がって日本シリーズに進出するチームとは別個に表彰している。
広島は2016年から3連覇したが日本シリーズは2回しか出ていない。反対にソフトバンクは2017年から日本シリーズで4連覇したものの、リーグ優勝は2度だった。
これなどもペナントレースを尊重する意図があるからだと考えられるが、それでも全員が納得するようなシステムではないとは言えるだろう。
3位のチームが日本シリーズに進んだのは2例ある
勝率3位のチームが日本シリーズに進出した「大・下克上」はこれまで2例ある。カッコ内は首位とのゲーム差。