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《エフフォーリアとGI2勝》横山武史22歳のスゴさとは?「どんな馬でも乗りこなして、能力を引き出す騎手になる」 父・典弘との関係性は
posted2021/11/07 11:02

現在22歳ながら今年GI3勝をあげている横山武史騎手
text by

島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Takuya Sugiyama
皐月賞、エフフォーリアは瞬時に抜け出した
エフフォーリアは速いスタートを切り、好位3、4番手の内につけた。横山は、馬場の傷んだ内目を走らされることを、特に気にしてはいないようだった。無理に外に出さなくても、自分の馬のリズムを大切にしてストライドを伸ばしてやれば結果はついてくる――と考えていることが、その騎乗から伝わってきた。
「例年そうなのですが、皐月賞はペースが流れるので、折り合いにはまったく苦労しませんでした。すごくいい雰囲気のまま、道中を運ぶことができました」
エフフォーリアは、先頭から2馬身ほど後ろの内で3、4コーナーを回った。外から他馬が押し寄せ、それらが雁行状の壁になって前を塞いでいる。
1番人気のダノンザキッドは外に進路を取ったのに対し、横山はそのまま、前方に隙間ができるのを待っていた。
「4コーナーで外に出すことも少し考えたのですが、隊列や、僕自身の手応えから、内をスムーズに回ったほうが馬の力を発揮できると判断しました。前が壁になっていても、焦りはありませんでした」
4コーナー出口から直線入口にかけて、エフフォーリアの右前方にいた馬の手応えが悪くなって失速し、その外にいた馬がさらに外に張り出しながら伸びたことにより、2頭の間にスペースができた。
横山はすかさずその隙間にエフフォーリアを誘導し、スパートをかけた。エフフォーリアは瞬時にそこから抜け出した。
「馬場が悪かったので、直線ではある程度馬群がバラけるだろうと思っていました。そこは読みどおりでした。一瞬の脚は本当に速いので、ちょっとでも前が開けば抜け出せる自信がありました」
「みんなに褒めてもらえるのは、嬉しいこと」
鹿戸はこう話す。
「道中折り合っていたので、安心して見ていられました。馬場が荒れていたので、直線ではバラけて、どこかしら開くだろうと思っていました。4コーナーであそこを行けという指示はしていませんが、武史の判断は正しかった。直線入口で抜け出したときに、勝ったと思いました」
エフフォーリアは横山の右ステッキに応えて末脚を伸ばし、2着に3馬身差をつけ、先頭でゴールを駆け抜けた。
4戦4勝でGI初制覇を遂げたエフフォーリアは、昨年のコントレイル、一昨年のサートゥルナーリアにつづく3年連続、史上19頭目の無敗の皐月賞馬となった。
新馬戦、百日草特別、共同通信杯、そして皐月賞と、相手が強くなるごとに2着との着差をひろげているのは驚くべきことだが、鹿戸の受け止め方はクールだ。
「一戦ごとに力をつけて、そのとおりに走ってくれた結果だと思います。平成以降、皐月賞で3馬身以上の差をつけて勝ったのはナリタブライアンとオルフェーヴル(東京開催)とこの馬だけだとよく言われますが、みんなに褒めてもらえるのは、陣営としては嬉しいことです」
横山も同じように感じている。
「もともとダイヤの原石だったのが、レースごとに自然に磨かれていった、ということだと思います。競馬は時計や着差などの数字では測れないものですが、ひとつの指標として、走るたびに差をひろげているのはすごいことだと思います」