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「勝って当然。負ける気はしない」横山武史(22)がデビュー時から信じていたエフフォーリアの未来《天皇賞・秋制覇》

posted2021/11/07 11:01

 
「勝って当然。負ける気はしない」横山武史(22)がデビュー時から信じていたエフフォーリアの未来《天皇賞・秋制覇》<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

第81回皐月賞を制したエフフォーリアと横山武史

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Keiji Ishikawa

10月31日の天皇賞・秋を制したエフフォーリアと横山武史(22)。エフフォーリアのデビューからの道のりを紐解き、これまで有料公開していた記事を特別に無料公開します(全2回の1回目/#2はこちら)。初出:『Sports Graphic Number1027』2021年6月3日号

2頭の三冠馬に比肩する皐月賞の3馬身差はクラシックの景色を混戦から一強へと変えた。手綱を執るのは名手の血を継ぐ22歳の若武者。一気呵成の栄冠へ、人馬の勢いは止まらない。

 今年のダービー戦線は、4戦全勝で皐月賞を制したエフフォーリア(牡、父エピファネイア、美浦・鹿戸雄一厩舎)の「一強」と見られている。史上8頭目となる無敗のクラシック二冠制覇を狙うこの馬の主戦騎手は、デビュー5年目、22歳の若武者・横山武史である。

 デビューした2017年は13勝を挙げるにとどまったが、2年目は35勝、3年目は54勝と着実に勝ち鞍を伸ばした。そして4年目の昨年は94勝をマーク。史上最年少で関東リーディングの座についた。

 そんな横山がエフフォーリアの背に初めて跨ったのは、昨年の8月初め、デビュー前の追い切りのときだった。場所は札幌競馬場の芝コースだった。

 横山に騎乗を依頼した経緯を、同馬を管理する鹿戸雄一調教師はこう話す。

「フットワークの大きい馬なので、1600mでも短いくらいかな、と思っていました。それで、長めの新馬戦がある札幌でデビューさせることにしました。ジョッキーを誰にするかもオーナーサイドと相談し、なるべく調教にも乗ってくれる騎手がよかったので、武史に頼むことにしました。彼はときどきうちの厩舎の調教を手伝ってくれていましたし、ちょうど、彼が活躍しはじめた時期でもありましたしね」

「あのとき武史は『絶対勝ちます』と言った」

 そのファーストコンタクトで、横山はどう感じたのだろうか。

「乗る前に馬体を見たとき、すごくいい体をしているな、と思いました。乗ったらどんな感触なのだろう、と。実際、調教で騎乗して、重賞は間違いなく勝てる馬だな、と思いました」

 1800mより2000mの新馬戦でデビューさせたほうがいい、という考えは、鹿戸と一致したという。

「今は違うのですが、あのときはまだ、自分から馬銜(ハミ)を取って行こうとする前向きさがなかったんです。それで、少しでも距離が長いほうがいいだろうと考えました」

 かくしてエフフォーリアは、8月23日に札幌芝2000mで行われた2歳新馬戦でデビューすることになった。道中は中団につけ、3、4コーナーで徐々に進出し、直線入口で先頭に立ち、押し切った。

「勝って当然。負ける気はしませんでした」

 横山はそう振り返る。鹿戸によると、レース前、特に指示はしなかったという。

「あまり細かいことを言っても緊張させるだけですからね。あのとき武史は『絶対勝ちます』と言ったので、僕は『じゃあ勝ってきてよ』と送り出しました(笑)。この馬にはいつも自信満々で乗ってくれるので、頼むほうも安心して見ていられます」

【次ページ】 「『ビシッとやってこい』とだけ言いました」

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