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はるな愛(49歳)が今明かすパラ開会式のウラ側「8年前に弟が車いす生活になった」「中学時代は壮絶いじめで自殺も考えた」 

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田村崇仁

田村崇仁Takahito Tamura

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posted2021/10/29 17:05

はるな愛(49歳)が今明かすパラ開会式のウラ側「8年前に弟が車いす生活になった」「中学時代は壮絶いじめで自殺も考えた」<Number Web> photograph by KYODO

2カ月前の東京パラリンピック開会式(8月24日)、オープニングのダンスシーンで登場したはるな愛さん(49歳)

「一人一人違う個性があるように、障害があることが当たり前の世界。もちろん、私は何とかの障害なのでよろしくお願いします、なんていう自己紹介もない。耳が聞こえない人がいれば手話覚えるね、という気持ちでとにかく必死だった」

 ダンスでは聴覚障害の人も気兼ねなくサポートし、どう動きを合わせるか試行錯誤しながら最善策を考えた。みんなが等身大で自由に輝き、まさに「ワンチーム」を感じた時間だった。

 本番当日の直前、開会式ディレクターを務めた演出家・劇作家のウォーリー木下さん(49歳)が「泣いても笑ってもこの1回です。みんな違って、みんないいっていうメッセージを世界に放ってください」と出演者に呼び掛けると、思わず涙がこぼれ落ちたという。するとムードメーカーで仲の良い低身長の女性、ジェーンちゃんから出た言葉に驚かされた。「『でも、みんな一緒がもっといい』って。それを笑って言ったのでドーンと胸に来ちゃった。すごい言葉やなって。みんな違ってみんなよくて、だけど1人じゃ生きていけないんですよ。だからみんな一緒で生きていけるのがいい。それほど、私だけなのかなという孤独を感じた時期もあったのかな、と理解しましたね」

演出家が語るあの“タケコプター”の意図

 そんな一体感が生まれたのは演出家の手腕も大きかった。ウォーリー木下さんは兄に生まれつき重い障害があり、式典との関わりを「運命」と表現した。障害者との作品づくりにも取り組んできた経験を踏まえ「みんなが伸び伸びとできる場をつくって、その中で表現が行われれば、未来に向けたメッセージが届くんじゃないかなと思っていた」と振り返る。トップダウン方式で出演者たちを型にはめず、それぞれが等身大でいられる演出を心掛けた。

 車いすの13歳、和合由依さんが「片翼の小さな飛行機」の主人公を演じた開会式の舞台は「パラ・エアポート」と名付けられた架空の空港。160を超える各国・地域の選手団入場で、歓迎したスタッフたちが人気漫画「ドラえもん」で有名な道具の一つ、タケコプターのようなプロペラを付けた帽子をかぶり、手拍子しながら誘導した場面も話題を呼んだ。

「とにかく選手入場のあの空間は、めちゃくちゃ風が起こっている設定にしたいなあと思って」とウォーリーさんが明かしたのは、自由に翼を広げて大空へ飛ぶ「風」への思い入れだ。

「あれは実はタケコプターではなくて(笑)。どちらかというと風車に近いんです! あの空港には風が、そして世界中から飛行機という名の選手たちがやってくる。たくさんのスタッフの頭の上でプロペラがぐるぐる回っていれば、目で見て風が起きてるって思うかなって」

 そう説明した上で、こうも付け加えた。

【次ページ】 「私も自由に自分らしく生きないと」

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