「まあ、でも全然タケコプターでも面白いと思います（笑）。その解釈を僕らが決めることではもちろん全然ないので」

　五輪の開会式が演出メンバーの相次ぐ辞任や解任など直前まで混乱が続いたのに比べ、パラの開会式は延期前からテーマが固まっており、ストーリーの統一感を詰めていく流れだったという。「人生は追い風ばかりではない。逆風を何度となく経験する。それでも勇気を出して『翼』を広げることで、思わぬ場所に到達できる」というコンセプト。「パラの風を吹かせよう！」といった強い信念と自由な発想が、多様な個性にあふれる出演者全員を輝かせる作品になった。

「五輪がいろんな要素がまぜこぜの幕の内弁当とすれば、パラは外野の注文も少なく一つの食材で勝負するイメージだった」と大会関係者は指摘する。好き嫌いや善しあしはともかく、演出の手法や考え方の違いも影響したのだろう。

海外記者からも好評だった“デコトラ”　©Getty Images

デコトラのなかでド派手演奏したギタリストの布袋寅泰さん　©Getty Images

「私も自由に自分らしく生きないと」

　多様な障害がある人たちとの共演でかけがえのない経験を積んだはるなさんは「自由」という言葉を繰り返した。中学時代は壮絶ないじめを受け、自殺も考えるほど苦悩した時期がある。性別適合手術後も、戸籍は男性のままだ。

「LGBTQという言葉が世の中に出てきた時に、実はきょとんとしちゃった。私は何も当てはまらないって」

　性にこだわらず「はるな愛」として自由に生きることで安らぎを見いだした。

「特別な存在ってないんですよ。そういう意味でも『みんな一緒』って言うジェーンちゃんの言葉と、『みんな違って、みんないい』っていうウォーリーさんの言葉。これがもっと本当の意味で、世界に広がっていったらいいな」と願っている。

　開会式冒頭の振り付けで空を見上げるシーンがあった。

「それぞれの空を思い描いてくださいと演出で言われたけど、私自身も翼を広げて自由に自分らしく生きないと。だって空はつながっているんだから。きっといつか分かり合える」

　そう言って、はるなさんは目を輝かせた。

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