沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
「今年もこの2頭か…」からの衝撃 “絶対王者”テイエムオペラオーを“21世紀最初の天皇賞・秋”で破ったのは〈二刀流の新星〉だった
posted2021/10/29 06:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Sankei Shinbun
「20世紀最後の王者」の覇権を「新世紀の二刀流王者」が打ち砕き、新時代の到来を高らかに宣言した――。
20年前の2001年10月28日。第124回天皇賞・秋で1番人気に支持されたのは、前年の年度代表馬テイエムオペラオーだった。
中距離界の「絶対王者」テイエムオペラオー
オペラオーが2000年に見せた強さは尋常ではなかった。そのとき旧5歳。まず年明け初戦の京都記念を勝つと、つづく阪神大賞典、天皇賞・春、宝塚記念、京都大賞典、天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念を全勝。史上初の古馬中長距離GI5勝という偉業をやってのけた。それもすべて1番人気での勝利だったから、文句なしの「絶対王者」 (当時はこの表現はなかったが)であった。
レース後の勝利騎手インタビューの最後に、主戦騎手の和田竜二が、アントニオ猪木ばりに「1、2、3、ダー!」と叫ぶシーンもおなじみになっていた。
もうひとつ「おなじみ」と言えたのは、2着馬だった。この年の宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念で、メイショウドトウが2着になったのだ。
オペラオーが「絶対王者」なら、メイショウドトウは「絶対2着馬」だったわけだが、その構図は翌01年もつづくかに見えた。大阪杯(4着)をステップに天皇賞・春に臨んだオペラオーは同レース連覇を果たし、2着はまたもメイショウドトウだった。しかし、次走の宝塚記念ではメイショウドトウが勝ってオペラオーが2着と、6度目の直接対決で初めて順位が逆転した。
そして秋。オペラオーは、休み明けの京都大賞典で勝利をおさめたが、1位入線のステイゴールドが失格となったことによる繰り上がりであった。
メイショウドトウがハナに、オペラオーは2番手
それでもオペラオーは強い。そう信じる人々の思いが、第124回天皇賞・秋での単勝2.1倍という支持となって表れていた。
2番人気はメイショウドトウ、3番人気はGIで2着4回のステイゴールド、4番人気は前年のマイルチャンピオンシップの覇者で、前走、岩手の統一GI南部杯を勝ってここに来た、芝・ダートの「二刀流王者」アグネスデジタルであった。なお、メイショウドトウとアグネスデジタルは外国産馬であった。
降りしきる雨のなか、第124回天皇賞・秋のゲートが開いた。芝コンディションは重。
内の2番枠からメイショウドトウがハナに立った。テイエムオペラオーも速いスタートを切り、2番手で最初のコーナーを回って、向正面へと入って行く。3番手の内に武豊のステイゴールドと、人気どころが前に行く展開になった。