核心にシュートを!BACK NUMBER
「選手が『どこに立つか』で、変わってきます」日本代表のキーマン・MF田中碧(23)がチームに勇気を与える“最大の武器”とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJMPA
posted2021/10/14 11:02
10月12日の日本vsオーストラリアにて、抜群の存在感を発揮したMF田中碧
吉田麻也が語っていたサウジ戦の“敗因”
10月7日。サウジアラビアに0-1で敗れた試合の最大の問題は、「勇気を持ってパスをつなげなかった」ことにある。
キャプテンの吉田麻也はこう振り返っていた。
「ボールを失いたくないので、セーフティーな選択になってしまって、怖さが出なかった。特に、後半に入って、50分から(71分に)失点するあたりまでは、ボールが後ろに行く回数が多くて……」
そして、課題を端的に表現した。
「最初のタッチの後に、後ろに行くというのは非常に良くないです。そこで相手が『ここぞ!』とばかりに勢いを持ってきていたな、とビデオを見て改めて感じました。(大事なのは)積極性を取り戻すことです」
確かにあの試合では、ダブルボランチの一角に入った柴崎岳のバックパスのミスが失点につながったことがクローズアップされた。あのパスミス自体も、その前の自らファールを受けたと判断してプレーを止めてピンチを招いたシーンについても、批判されてしかるべきだろう。
柴崎のパスミスを、監督がフォローすべきだった理由
ただ、その一方で語られていないことがある。
まず、柴崎は、勇気を持っていた。例えば、後半16分の右サイドの高い位置からのスローイン。あの試合の日本代表のメンタリティーを象徴するようなシーンだった。酒井宏樹がボールを投げ入れようとしているのに、日本の選手たちはボールを受けに行きたがらない。主審が早くスローインをするように急かしたとき、勇気を出して受けに行ったのは柴崎だった。
そして、あの柴崎のバックパスまでの流れは、吉田の言葉を借りれば「ボールが後ろに行く回数が」多かったために、「相手が『ここぞ!』とばかりに勢いを持ってきていた」から生まれたものだった。
あのパスミスは柴崎のプレーだが、その原因を作ったのはチーム全員だったのではないだろうか。本来ならば監督が「あのミスは柴崎だけの責任ではなく、パスをつなぐのを恐れていたチームみんなの責任だ」とフォローすべきだった。しかし実際には、疲労が例に挙げられ、うやむやになった。
田中、遠藤、守田が絶妙に機能した「距離感」とオプション
日本が本来の実力を出せなかったのは、勇気を欠いていたから。その現実に直面した今回の日本代表が取り組んだのは、根性論で勇気を取り戻すことではなく、システムと個人戦術による改善だった。吉田はこう話していた。
「積極性を取り戻すためには選手の『距離感』が非常に大事になってくるので。ボールを持ったときに、常に2つ、3つのオプションがあるような状態を作り出さないといけない」
適切な「距離感」を保ち、プレーのオプションを2つ、3つと作るためにキーになったのが、これまで試してこなかった遠藤航、守田英正、そして田中の3人を中盤に並べる形だった。