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《8歳で復活V秘話》マカヒキの“5年勝利なし”は、16年の凱旋門賞惨敗から始まった…それでも京都大賞典を勝てた“理由”とは?
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/10/13 06:00
京都大賞典で衝撃の復活Vを果たしたマカヒキ。写真はその前に最後に勝利した2016年の凱旋門賞前哨戦、ニエル賞。マカヒキは写真一番右
レースを振り返るルメール騎手は残念そうな表情を隠す事なく、言った。
「序盤から行きたがってしまいました。マカヒキが折り合いを欠いたのは初めてです。だから早々に息が上がってしまいました」
本来なら勝ち負けを争う最後の直線で、ルメール騎手は早々に白旗を挙げた。
「調子は良いと感じたのに、最終コーナーではもう余力がありませんでした。最後はマカヒキをリスペクトして、無理をさせませんでした」
だから大きく離されたこの結果がイコール力の差というわけではなかった。しかし、やはり初めての古馬との対戦が凱旋門賞というシチュエーションは結果的にあまりにも厳しかった。そして、ここで跳ね返されたのを分岐点として、このディープインパクトの仔は出口の見えないトンネルに迷い込む事になった。
復活Vは“大事に大事に使ってきた”結果
さて、当時はこの後、5年以上も勝ち星から見放されるとは誰が想像出来ただろう。GIを中心に重賞戦線を走り続けたマカヒキだが、ダービー馬らしいパフォーマンスは出来ないまま月日が過ぎた。この間、連対したのも18年の札幌記念(GII)が最後。19年の3月以降はGIばかり7戦を走っていたが、4着2回があるだけ。昨年以降は大阪杯(GI)が11着、ジャパンC(GI)が9着、そしてこの春の天皇賞・春(GI)が8着と全く良いところのない競馬が続いていた。
しかし、陣営はダービー馬の復活を信じていた。今回の京都大賞典(GII)の前、友道調教師は「数を使っていないので衰えは感じません」と語った。
指揮官がそう語るように、実際、昨年は2度しか走っていなかった。そして今年もこの京都大賞典が2度目の出走だった。「ダービー馬の実力はこんなものではない」という矜持はあっただろうが、意地になる事はせず、大事に大事に使って来た。それがダービー馬としては史上最長のブランクとなる5年ぶりの勝利につながったのは間違いないだろう。この後は天皇賞・秋をパスしてジャパンCに向かう可能性が高いようだ。次はGIで、ダービー馬らしい走りが見られる事を期待したい。