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メジャー志向選手は増えるも…現役代理人が明かす「MLB挑戦」のリアル〈もし、大谷翔平が“高卒”でアメリカに行っていたら?〉
posted2021/10/09 17:03
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
メジャーリーグのレギュラーシーズンが終了した。
日米の野球ファンが衝撃を受けた大谷翔平(エンゼルス)の46本塁打はタイトルに届かなかったとはいえ、センセーショナルなものだった。それも投手として9勝を挙げながらの成績なのだから、2021年を振り返る最も印象的な出来事として記憶されたに違いない。
しかし、その一方で、夢破れ、アメリカを後にしたどころか野球界をさる決断をした日本人選手もいた。中学を卒業後にメジャーリーグに挑戦した結城海斗だ。
彼のカンザスシティ・ロイヤルズ入りが発表された時は驚いたものだ。日本人の誰もが甲子園を夢見る16歳、近くに見える目標ではなく遥か先を到達点にして海を渡ったのだ。彼の挑戦は勇気あるものだった。
とはいえ、彼の目標が叶わなかった今、考えなくてはいけないのは彼の挑戦を日本球界がどう受け止め、発展的なものにしていくかだろう。
結城海斗の事例で浮かび上がった「メジャーの現実」
改めてメジャーリーグ挑戦を考えてみたい。昨今は高校生でもプロを経ないでメジャーリーグに行きたいという選手が出てきているが、結城の例を見ると、そう簡単ではない現実がある。
「本当にあの年齢で行く必要があったのかなとは思います。確かに、ドミニカ共和国やベネズエラなどの国の選手はあれくらいの年齢でもMLB球団と契約する選手はたくさんいます。しかし、国の教育や経済事情が異なります。日本は教育機関がしっかりしているので、日本人選手は国内の高校に行く方がいい。無理にアメリカを選択する必要はないと思います」
そう語るのはMLB選手会公認エージェントの長谷川嘉宣氏だ。
ソフトバンクの和田毅や、ワールドシリーズ制覇を2度経験した田口壮(現・オリックス外野守備走塁コーチ)ほか、現在、日本で活躍する外国人選手の代理人を請け負っている。この道、20年の両国の移籍事情を知る人物だ。
長谷川のような存在は海外挑戦を夢見る人物にとってはキーパーソンになると思う。日本ではエージェントと聞くと「お金の交渉をする」ダークな存在に見られがちだが、適切な海外挑戦を後押しも、引き止めもしてくれる人物であるからだ。メジャーリーグがどんな選手を求めているか、そして日本人のポテンシャルという両方の視点を持っているのだ。