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メジャー志向選手は増えるも…現役代理人が明かす「MLB挑戦」のリアル〈もし、大谷翔平が“高卒”でアメリカに行っていたら?〉 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2021/10/09 17:03

メジャー志向選手は増えるも…現役代理人が明かす「MLB挑戦」のリアル〈もし、大谷翔平が“高卒”でアメリカに行っていたら?〉<Number Web> photograph by JIJI PRESS

中卒でメジャー挑戦した結城海斗の“事例”を日本球界はどう受け止めるか?

 アメリカの大学に進むとなれば、ルールの網に引っかかることもない。

 大学であれば、アメリカの環境や野球に馴染むことができるし、たとえ、日本に帰国することになってもチャンスはあるだろう。また、語学をマスターしていれば、セカンドキャリアにおいて英語力を生かした仕事を見つけることだってできる。

 メジャー志向がある高校生についての前提だが、選択の一つとして考えても良さそうだ。

 アスリートとして、最も痛手なのは「もっと若いときに行っておけばよかった」という後悔が生まれることだ。これを無くすためには、ルール改正をしなければいけないが、現状、そうなることはない。メジャーを目指すのであれば、さまざまなところにリスク管理をしておかなければいけないだろう。

「契約金」と「チャンス」は比例している

 また、次の長谷川の言葉はメジャー挑戦の本質を理解することに役立つ。

 夢と現実の狭間で、メジャー志向の選手が頭に入れておくべき視点だ。

「どの世代にもいえますが、メジャーは『契約金の高さ』と『チャンスの多さ』は比例しています。メジャーから声がかかったといっても、契約金が数千ドル程度だと、1、2年でクビにされる。一方、1億とかを払っている選手には、チャンスを与え続けるんです。すぐに切ってしまうと、大金をドブに捨てるようなものですから。

 つまり、『ここでクビにするのはもったいない』と思わせる契約にしないといけない。僕らがその話をするとまたお金の話かと言われますけど、違うんです。お金とチャンスの量が比例しているという現実がある。そこを勝ち取ってあげないといけない。メジャーのスカウトから声が掛かっただけで喜んじゃダメなんですよ。5年先、10年先のプランを見ながら今の判断をすることが必要なんです」

 若い世代の海外挑戦はもはや避けられない。

 野茂英雄のトルネード旋風から25年が経過し、メジャーリーグで日本人選手を見るのは当たり前になっている。トップを目指すアスリートならより高いレベルで自分を磨きたいと考えるのは必然の考え方だ。

 ただ、挑戦の在り方は考えるべきで、それを導いてくれる、いわば、両方の野球界のことをしっかりと認識して、時には背中を押し、時に踏みとどまらせてくれる長谷川のような人物はそれほど多くない。

 もし、メジャー志向のあるドラフト候補がこの記事を読んでいたら、一度、考えてみてほしい。どういう形でメジャーを目指すのか。そのためには何が必要なのか。

 長谷川が言うように、日本の球団を経てからメジャーに行くのがベターだろう。しかし、それを果たすためには現実を知っておかなければいけないのだ。

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