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藤井くんは「ぴよりん/コロコロしばちゃん」、羽生さんは「溶けたアイスを飲んだ伝説」… 将棋と《おやつ》の幸せな関係 

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中村太地

中村太地Taichi Nakamura

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photograph byHiroshi Kamaya

posted2021/10/08 06:01

藤井くんは「ぴよりん/コロコロしばちゃん」、羽生さんは「溶けたアイスを飲んだ伝説」… 将棋と《おやつ》の幸せな関係<Number Web> photograph by Hiroshi Kamaya

叡王となった藤井聡太三冠。会見ではマスク越しながら、「ペコちゃん」のぬいぐるみを手に柔和な表情を浮かべていた

「太地さんはどんなお菓子を頼んだんですか?」というのもよく聞かれます。自分の話で少々恥ずかしいですが……個人的に甘いもの、特にチョコレートケーキ系が好きなので、そういった系統を頼むことがありました。あと、茶室のような対局場での一局で、抹茶を出していただいたのは非常に印象に残っていますね。

「定跡」はチョコ、バナナ……ブドウ糖を持ち込む人も

 冒頭で触れた通り、タイトル戦は非常に緊迫した空気感の中で進みます。そんな中で少しメンタルを変えると言いましょうか、対局中の「癒し」になっているんです。

 だから、タイトル戦に臨む棋士も相当楽しみにしている方が多いと思いますね。また、地元の名産を楽しめるという意味では、当地を旅している気分を味わえるという意味もありますので。

 脳を使っていると糖分が必要、という話もありますが、タイトル戦以外の対局でも甘いものを持ち込んでいる棋士が大半な気がします。どんなスイーツが「定跡」かというと……一番多いのはチョコレート系ですかね。あとは栄養補給という意味では――永瀬拓矢王座の印象が強いですが――バナナも多いですし、どら焼きを2、3個持ち込んでいたりする人も。

 あとちょっと驚いたのは、ブドウ糖を直接注入する人もいました。そう、四角い固形のアレです(笑)。ブドウ糖が豊富に含まれているラムネを持ってきて、ポリポリと食べている人もいます。

 食べる場所についても――今はコロナ禍なので非常に気を使っていますが、将棋盤の前や横に座って局面を眺めながら食べる人もいれば、別室に移動して食べる人もいたりしますし。そういう意味では、おやつ1つとっても本当に棋士の個性が現れるなあ、と感じます。

ひふみんと板チョコ、羽生さんの“溶けたアイス”

 過去の大棋士とおやつのエピソードは事欠きません。真っ先に有名になったのは、加藤一二三先生ですね。

 将棋界では鉄板の話なんですが、板チョコを一気に7、8枚バリバリと召し上がられたり、ゼリーも3秒ぐらいで1個パクっと食べてしまう。昼食などもしっかりと摂られているのに、これだけ食欲旺盛なのは体力がある証拠だなと感じていましたし、そのパワーがあるからこそ77歳まで現役棋士として対局に臨めたのだろうな、とも思います。

 これも将棋界では有名ですが……「タイトル戦で羽生(善治)先生が溶けたアイスを飲んだ」という伝説がありますね。

【次ページ】 対局者の深浦九段は“アイス飲み”を見て……

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