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藤井くんは「ぴよりん/コロコロしばちゃん」、羽生さんは「溶けたアイスを飲んだ伝説」… 将棋と《おやつ》の幸せな関係
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byHiroshi Kamaya
posted2021/10/08 06:01
叡王となった藤井聡太三冠。会見ではマスク越しながら、「ペコちゃん」のぬいぐるみを手に柔和な表情を浮かべていた
インターネットなどが普及していない時代から、地方の将棋ファンの人にも最高峰の対局を見てもらって、普及を頑張りたい、地元を盛り上げたいというのが将棋界の思いとしてありました。だからこそ、各地域の方々にご協力いただきながら各地の名物おやつも対局中に存在したのではないかな、と感じます。
藤井三冠らの「おやつ」は全員を幸せにしている
そんな積み重ねをしていった将棋界ですが、ここ10数年でインターネットが普及し、ネット中継で長時間対局が見られるようになりました。それによって宣伝パワー自体が高まり、藤井三冠の大人気も相乗効果で……というサイクルがあるのだと思います。
先ほど挙げた「ぴよりん」、そして叡王戦スポンサーの不二家さんも、藤井三冠が頼んだ「コロコロしばちゃん」などのお菓子に注目が集まったことで、喜んでくださっていると思います。そういう意味では棋士・ファン・スポンサーそれぞれが幸福な関係を築き上げられているのではないでしょうか。
そもそも、タイトル戦ではいつ頼んでいるの?
「おやつ」については素朴な疑問が多くあるようなので――私自身がタイトル戦などで経験した豆知識をご紹介できればと思います。
まずは「おやつっていつ、何を頼んでいるの?」というのは多くの人が気になっているそうですね。実は注文の仕方って、タイトル戦によって頼むタイミングが違うんですよね。
そもそもタイトル戦ごとに持ち時間や2日制(竜王戦は8時間2日制、王座戦は5時間1日制)など、スポーツで言うレギュレーションが変化します。
おやつも同じで「午前のおやつ/午後のおやつ」と2回ある棋戦と、午後のおやつだけという棋戦もあります。注文のタイミングについても……食事を含めて全て対局が始まる前、たとえば検分の後などに頼みきってしまう棋戦もありますし、対局が始まって昼食あたりの時間になったらメニューを持ってきてもらって、そこで決めるパターンのタイトル戦もある。私が戦った王座戦は後者でしたね。
実はこんな感じで統一されていないので、中継をご覧になられる際には、タイミングなどを見比べても面白いかもしれません。