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ロシアW杯収入5890億円の莫大さ… 「W杯2年ごと開催案」に深まるFIFA対UEFAの対立《ベンゲルは意外にも?賛成派》
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/09/29 17:03
フットボールの祭典、W杯。FIFAにとっては極上の“金のなる木”だという現実でもある
毎年、夏にひと月に及ぶ大会を開催するのは、選手への殺人行為だ。また(各大陸選手権が)女子W杯や五輪と重なってしまう。それにW杯は、4年ごとの開催だからこそ価値があるのだ。五輪のように、特別な大会を待ち望むことに」
また発案者のベンゲルは、「このアイデアは本当に、競技と大会の質を向上させるためのものであり、金銭的な意図はまったくない」とも語っているが、これをすんなりと受け止める人はどれくらいいるだろうか。
ロシアW杯収入は5890億円、莫大な収入源だが
ポーツマス大学の会計学と経済学のクリスティーナ・フィリップ主任講師によると、FIFAの収入はW杯開催年とそれ以外の年で約6倍の差があるという。そして前回の2018年大会の収入は、過去最多となる53億5700万ドル(約5890億円)だったと公表されている。この莫大な収入源となる大会を過去の2倍のペースで開催したいというのが、本音だとしても不思議ではない。
もし本当に選手や競技のことを考えているのであれば、代表戦の集中開催だけを採用すればいいのではないかと思う。代表選手の移動が減ることは、日本を含め、多くの国の選手のメリットになるはずだ。
でも個人的には、W杯(と各大陸選手権)はこれまで通り、4年に一度だからこそワクワクするし、本当の価値があると考える。ウェールズ代表の主将ギャレス・ベイルや、ドイツ・フットボール協会、そのほか多くの関係者やファンの意見と同じように。
UEFAのチェフェリン会長は、ただちにFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長との会合を要請したという。「関係者全員の意見を聞き、尊重する。新しいFIFAは民主的な組織なのだから」とインファンティーノ会長は豪華なホテルの一室で話した。それはある意味で、FIFA傘下のひとつの連盟ながら、大きな力と富を持ち続けるUEFAへのメッセージと受け取れなくもない。
このW杯改革案は、FIFA対UEFAの構図でも捉えられる。あるいは欧州スーパーリーグ騒動に続く、パンデミックの混乱に乗じた支配者たちの暴挙か。
いずれにせよ、仕立ての良いスーツ姿の人々ではなく、選手やファンなど、本当にいなければならない人が望む形に落ち着くことを願いたい。
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