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ジョージア出身のGKが歩む鮮やかなシンデレラストーリー 5部でプレー予定がいきなりバレンシアの守護神に
posted2021/09/29 17:04
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
予期せぬ活躍や獲得コスト以上のパフォーマンスを披露し、「サプライズ」だの「掘り出し物」だのと評される選手は、毎年現れる。
今季の筆頭はバレンシアのGKギオルギ・ママルダシュビリである。
18歳でトップチーム入りも出番には恵まれず
現役時代やはりGKだった父を持つ彼は、恵まれた体格と年齢に見合わぬ高度なスキルによって早くから有望視されて、ジョージアの名門ディナモ・トビリシのカンテラに入団。18歳でトップチーム入りを果たした。
しかし、どの国のどのクラブであっても、2番手以下は出場機会に恵まれないもの。
さらなる成長を望んだママルダシュビリは、一昨年はメタルルギ・ルスタビへ、昨年はロコモティビ・トビリシへローン移籍。9月にEL予選ラウンドでグラナダと対戦した。
そのときのパフォーマンスはスペインのメディアからも高く評価されたが、強い関心を持つクラブが現れなかったのは、彼がジョージアというサッカー非大国出身の選手だったからかもしれない。
当時であれば、25万ユーロ(約3200万円)以下で獲得できたというのに。
ともあれ、ロコモティビでのママルダシュビリを見て可能性を確信したスペイン在住の代理人は、彼をジョージア外へ連れ出すべく、まずは1部の全クラブに売り込みをかけた。が、良い返事はほとんどなし。唯一興味を示したレバンテにも結局「GK枠に空きがない」と断られてしまった。
続いて2部のクラブに当たったところ、ちょうどGKの入れ替えに動いていたフエンラブラダから「前向きに考える」という返信があった。
ママルダシュビリにとってもフエンラブラダへの移籍は悪くない。2018-19シーズンに初の2部昇格を遂げ、さらなる高みを目指している野心的なクラブなので比較的注目度が高い。自分次第で道は開ける。
しかし、この話もフエンラブラダの都合により頓挫してしまう。
「こいつはうちのもの。Bチームに戻すのは諦めろ」
そんなところに現れたのが、バレンシアのカンテラのディレクターたちだった。
ママルダシュビリには光るものがあると感じた彼らは、クラブのスポーツディレクターを説得して1年間のローン料=5万ユーロ(約640万円)の支払いを認めてもらう一方で、ママルダシュビリ側には今季からRFEF3部(日本の5部に相当するアマチュアリーグ)で戦うBチームへの加入を提案した。
その際、トップチームにはすでにGKが3人いるので練習参加も約束できないと夢のない説明を受けたママルダシュビリだったが、ジョージア代表監督ウィリー・サニョルにも「迷わず承諾しろ」と背中を押されて、バレンシア行きを決意した。