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ロシアW杯収入5890億円の莫大さ… 「W杯2年ごと開催案」に深まるFIFA対UEFAの対立《ベンゲルは意外にも?賛成派》
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/09/29 17:03
フットボールの祭典、W杯。FIFAにとっては極上の“金のなる木”だという現実でもある
具体的には、現在のようにW杯予選を5回に渡って年間スケジュールに組み込むのではなく、10月から11月にかけて1度の集中開催にする『オプション1』か、それに3月開催を加えて2度の集中開催にする『オプション2』を提示。彼が無意味な試合と捉えるUEFAネーションズリーグは廃止するという。そして2024年から、W杯と各大陸選手権を交互に開催すべきだと言う。つまり毎夏、代表の主要大会を開催しようというわけだ。
「重要なのは、意味のある試合の増加だ」
「我々は試合数を増やそうとはしていない。そこには特に配慮している。私にとって最も重要なのは、意味のある試合の増加だ。今のファンはそれを求めている。私たちは、その期待に応えなくてはならない」
この71歳のチーフは続けて、「我々はeスポーツのあるスピーディーな社会に暮らしており、新しい世代(の人々)は彼らの欲求がすぐに叶えられることに慣れている」と若者たちを代弁。
「(W杯と各大陸選手権が交互に開催されるようになれば)そうしたファンの利益に繋がる。なぜなら、彼らにはトップクオリティーの大会をより頻繁に観る権利があると私は考える。また選手たちには移動の負担が減るうえ、真剣な試合やW杯に参加する機会が増えるのだ」
すると当然ながら、欧州や南米の連盟やクラブ、リーグ、ファンから懸念の声が噴出した。ベンゲルの意図はこの会見の数日前から欧州のメディアを騒がせており、会見の2日前に開催された欧州クラブ連盟の会合では、マンチェスター・シティのフェラン・ソリアーノCEOが「そんな(日程的)スペースはどこにもない。選手たちはこれ以上多くの試合をプレーできない。絶対に」と言った。
UEFA会長は「フットボールを殺す」
UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長にいたっては「(2年ごとのW杯開催は)フットボールを殺す」と英紙『ザ・タイムズ』に語り、ボイコットの可能性も示唆している。
「我々は不参加を決断することもできる。南米(連盟)も同じ意向だと聞いている。それでもよければ、好きにすればいい。フットボールの基本原理に大いに反くようなものが、実現できるとは思えない。