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三冠獲得・藤井聡太が次に狙う「竜王戦」の歴史… 羽生善治19歳、渡辺明20歳が頂点に昇り詰めるまで《優勝賞金4400万円》
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2021/09/14 17:20
史上最年少での三冠達成となった藤井聡太(19)。次に狙うタイトルは竜王戦だ
第2期竜王戦は、3組ランキング戦で4連勝し、決勝トーナメントで大山康晴十五世名人らに5連勝した。羽生は竜王戦の挑戦権を18歳11カ月で初めて獲得した。羽生は順位戦でC級1組に所属したが、実力はすでにAクラスと評価されていた。どの棋士もフロックとは思わなかった。
1989年12月。羽生六段は島竜王を4勝3敗で破り、初タイトルの竜王位を19歳2カ月で獲得した。
「渡辺六段」は20歳8カ月での初タイトル
渡辺の棋士デビュー戦は2000年4月(15歳11カ月)。その後は公式戦で好成績を挙げ、年度勝率はたいがい7割台だった。
2003年の王座戦で、渡辺五段は羽生王座に初挑戦した。「1局でも勝ったら上出来」という予想を覆し、渡辺は2勝1敗と勝ち越して羽生をカド番に追い詰めたが、結果は2勝3敗で敗退した。
第5局の最終盤では、勝ちを意識した羽生の駒を持つ手が震える光景が初めて見られた。現代では勝利のポーズといわれるが、当時は本当の緊張感だったようだ。
渡辺は4期目となる第17期竜王戦で、4組ランキング戦で5連勝し、決勝トーナメントで谷川浩司棋王らに5連勝した。竜王戦の挑戦権を20歳4カ月で初めて獲得した。渡辺は順位戦でC級1組に所属したが、2003年の王座戦で羽生に対して大健闘したように、実力と勢いがあった。
2004年12月。渡辺六段は森内俊之竜王を4勝3敗で破り、初タイトルの竜王位を20歳8カ月で獲得した。
読売新聞社は戦後まもない1950年、タイトル戦の「九段戦」を創設した。1962年には「十段戦」に格上げされた。十段戦のリーグ戦(6人)に入ると、先後2局ずつ計10局も一流棋士と対局できたのが最大の魅力だった。
読売は1970年代後半から、囲碁は「棋聖戦」を主催していたが、将棋の十段戦の契約金とは約2倍の差額があった。日本将棋連盟は「囲碁と将棋は歴史的に平等である」という観点から、読売に十段戦の契約金の大幅増額を何度も要求していた。
読売は「棋聖戦は囲碁界で席次一位の扱いを受けている。しかし十段戦は、将棋界で名人戦に次ぐ扱い。契約金の違いはその差であって、囲碁と将棋を差別しているわけではない。ただし、将棋界において最高の棋戦を主催することについては、強い関心がある」という見解だった。
その後、1985年から2年間にわたって、連盟と読売で交渉が続けられた。そして、順位戦から独立したランキング制、新体系の賞金制などで、両者は大筋で合意した。新棋戦の骨格は、現行の竜王戦どおりである。