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<全米OP>史上9度目22年ぶりの“10代対決”も「世界ランク70位以下」…なぜ女子の若手選手は活躍しづらくなったのか? 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2021/09/14 11:03

<全米OP>史上9度目22年ぶりの“10代対決”も「世界ランク70位以下」…なぜ女子の若手選手は活躍しづらくなったのか?<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

22年ぶりの10代決勝で勝利し、全米OPを制したのは18歳のエマ・ラドゥカヌ(イギリス)だった

 女子選手の低年齢化によるバーンアウト(燃え尽き症候群)や教育放棄を防ぐため、18歳までの選手には年齢ごとに出場大会数の制限をもうけている。最初にルール化されたのは90年代半ばだが、内容は時代とともに変更が加えられてきた。現在のルールでは14歳になるまでプロの大会には出場できず、14歳で出場できるのは8大会までとなっている。15歳は10大会、16歳は12大会といった具合で、ここでは省くが、その中でも大会の格やワイルドカードの扱いなど詳細に定められている。

 このルールができる前はどうだったかというと、たとえば先に挙げた10代対決のリストで3度名前が出てくるグラフは、13歳で最初のプロ大会を戦い、14歳のときには13大会も出場していた。

 このことに加え、選手寿命が延び、実力あるベテランの層が厚くなったことも挙げられる。選手寿命の長期化は、賞金の高騰や女子選手の地位向上により、コーチやトレーナー、マネージャーなどとともにチーム体制でツアーを回ることができるようになったことが影響していると考えられる。選手の体調やスケジュール管理が徹底されるようになったのだ。

「これからのことは、正直言って何も考えていない」

 そういう時代に73位と150位の10代対決はそれだけで十分センセーショナルだったが、ラドゥカヌのストレート勝利という決勝戦の結果はこの大会をさらに歴史的なものにした。男女を通して史上初となる予選からのグランドスラム・チャンピオンの誕生。ラドゥカヌはこれまでに獲得した賞金の総額の10倍近い額に相当する250万ドル(約2億7500万円)を一度に手に入れた。人生は華やかに一変するだろう。それでも軸足をコートにおいて、勤勉であり続けた者たちが真の女王になった。この18歳はどうだろうか。

「これからのことは、正直言って何も考えていない。明日何をするのかもわかっていない。今はただ、この瞬間の全てを大切にしたい」

 肩を大きく出したドレスに着替え、生まれたばかりのスターはキラキラと輝いていた。

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