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復活ではなく“新しい自分”…今季復調のDeNAのリードオフマン桑原将志が、恐怖心を克服して躍動するきっかけとは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/09/13 11:02
現在、打率3割1分付近とキャリアハイに迫るものの、試合に出場できない恐怖を知っているからこそ、打席での思考法を変えた
春季キャンプは2年連続してファームスタートだった。外野は首位打者の佐野恵太、そして来日は遅れていたがタイラー・オースティンが確定のなか、残り1枠を巡る競争だった。同じ歳の神里和毅、乙坂智をはじめ関根大気、楠本泰史、細川成也らがライバル。センターの守備に関しては頭ひとつ抜きん出る桑原であったが、不振だった打撃を改善しなければならない。結果的に桑原はオープン戦で規定打席数に届いた打者としてチーム1番の打率(.296)を残し、開幕スタメンの座を手に入れた。
フォームに関しては数年前から「掴んだものがあるので、大きく変えることはない」と語っており、細かい変化はあるものの桑原の独自のスタイルを構築しつつあった。ヘッドの位置を決め、頭と体軸の縦位置は揺るがず、踏み込み平行移動しながらインサイドアウトでバットを鋭く振り抜く。今やリーグ上位に食い込む3割超えの打率を残しているわけだが、桑原いわく大きく変わったのはマインドだという。
不調時に桑原に話を訊いたとき、よく「バッターボックスであれこれ考え過ぎてしまっている」と語っていた。そして「自分の感覚を大事に、あまり考えないようにしたい」とも言っていた。
以前レギュラーだった桑原といえば、相手ピッチャーがどうこうというよりも、カウントを読み解き、呼吸や間を読んで、どこか野性的な感覚でバッティングを行っていた。しかしキャリアを重ねるにつれ考えることも多くなり、思考が定まらなくなってバランスを崩してしまっていた。
ようやく手にしたブレない感覚
そんな桑原が苦難の末、導き出したのが“割り切り”である。
「考え過ぎていた部分が多かったのはたしかです。だからまずフォームに関しては毎日同じことの繰り返しだと思っているので、自分の体と向き合うのは練習で終わりにして、準備を整える。今までは練習でなにげなく打っていたんですけど、チェックするポイントが明確になったんです」
まずフォームに関しては迷いを捨てて試合に挑む。そして打席に入ったら、対ピッチャーに集中する。極端なことを言えば、チームからのオーダーを加味しつつ、配球を頭に入れ、狙うボール、捨てるボールをはっきりとさせた。