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復活ではなく“新しい自分”…今季復調のDeNAのリードオフマン桑原将志が、恐怖心を克服して躍動するきっかけとは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/09/13 11:02
現在、打率3割1分付近とキャリアハイに迫るものの、試合に出場できない恐怖を知っているからこそ、打席での思考法を変えた
「ファームで過ごした時間は一生忘れることはないですし、苦しかったけど、本当に大事な時間だったと思います」
だからこそ、もう二度とレギュラーを手放したくない。
「常に結果を求められる世界ですし、そこに向き合っていかなければいけない。本当、怖いんですけど腹を括れている自分はいます。もう失うものはないという言い方は変ですけど、今こうしてやれていることに自覚と責任を持ちたい。やっぱり一度、失ってしまったことは脳裏に焼き付いているので、もっと上を目指していく必要があると思います」
好戦的な鋭い目つきで桑原は言うと、次のようにつづけた。
「あらためてグラウンドでプレーできるのは本当に幸せなことだと実感しています。けどそれだけでは終わらず、応援していただいているファンの方々も大勢いますし、何とか熱いプレーで応えていきたいなって」
プロ10年目。いわば桑原の歩みは、創設10年目を迎えたDeNAの歴史でもある。中畑清監督時代に頭角を現し、アレックス・ラミレス監督時代にはレギュラーとなり、その後スランプに陥った。そして三浦監督になると復活を遂げた。まさに紆余曲折の野球人生だ。
復活ではなく、新しい自分
そこで『復活』と聞いて、桑原はかぶりを振った。
「いやいや、僕のなかでは復活だと思っていませんよ。かつて(レギュラーだったとき)の成績はどうかなといった思いもありますし、ずーっと新しい自分を追い求めていきたいんです」
中堅からベテランに差し掛かる年代ではあるが、その表情や小柄な体格、ファイトあふれるプレースタイルから桑原には時の流れを感じさせない若々しさが見て取れる。
「そうっすね。日に日にキラキラが増していけるように。それが大事っすよね」
そう言うと破顔一笑。酸いも甘いも噛み分けた、ニュー桑原。DeNA自慢のリードオフマンが出塁をすると、なにかが起こる――。