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復活ではなく“新しい自分”…今季復調のDeNAのリードオフマン桑原将志が、恐怖心を克服して躍動するきっかけとは

posted2021/09/13 11:02

 
復活ではなく“新しい自分”…今季復調のDeNAのリードオフマン桑原将志が、恐怖心を克服して躍動するきっかけとは<Number Web> photograph by KYODO

現在、打率3割1分付近とキャリアハイに迫るものの、試合に出場できない恐怖を知っているからこそ、打席での思考法を変えた

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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「正直に言えば“怖い”ですよ……」

 横浜DeNAベイスターズの桑原将志は、不安と安堵が微妙に入り混じった複雑な表情を見せポツリと言った。

「怖いですけど、毎日のことですし何とかそれを打ち負かせるように準備をして、ワンプレーワンプレーに気持ちを込めています」

 襲いくる恐怖心――桑原は今シーズン、1番・センターのレギュラーとしてキャリアハイを刻もうとしている。これが普通の選手であれば好調なのに意外だな、と思うかもしれないが、近年の桑原を鑑みればそう思い至っても仕方のないことだった。

 走攻守揃った外野手として桑原は、入団5年目の2016年にリードオフマンとしてレギュラーの座を獲得。翌2017年には全試合に出場し、不動の地位を築いたと思ったが、2018年から徐々に成績は下降線を辿り、昨シーズンはわずか34試合の出場にとどまった。打率も2年連続して1割台に沈み、かつて太陽のように輝いていた“ガッツマン”は光を失った。

 不振だったこの数年、スタジアムで顔を合わせると桑原らしい朗らかな明るい笑顔で接してくれてはいたが、ふと練習中やベンチで見せるどこか沈んだシリアスな表情を見ると、苦しみの渦中にいることがわかった。

恐怖心の正体

 躍動をしている今季、流れを変える守備を披露し、また先頭打者として出塁し後方に控える重量打線のヒットでダイアモンドを駆け巡る。ベストな選手として存在感を示しているが、その心の奥底には「もうあの頃には戻りたくない。二度とレギュラーの座を放したくない」という焦燥感があることは想像に難くない。だから“怖い”のだ。

【次ページ】 ようやく手にしたブレない感覚

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