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復活ではなく“新しい自分”…今季復調のDeNAのリードオフマン桑原将志が、恐怖心を克服して躍動するきっかけとは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/09/13 11:02
現在、打率3割1分付近とキャリアハイに迫るものの、試合に出場できない恐怖を知っているからこそ、打席での思考法を変えた
「簡単にヒットは打てないので、そこは割り切っていくしかない。そこからの応用に関しては自分が日々練習していることが出せればいいといった感じですね。自分でも手応えを感じています。ただ、もっと良くなる方法はあるんじゃないかって模索しながら、自分の芯をしっかり持ちアプローチしていければいいなって」
技術に確信が持てれば、メンタルは向上する。その逆もまた然りだと桑原は考えている。結果、割り切りによりブレのない感覚を手に入れた。
また今季前半戦は、背中を見せるべき若手がベンチにいた。それは自主トレをともにする3年目の知野直人だ。過去2年、ともにファームで過ごすことの多かった後輩である。
「彼も僕も苦労して、結果を出したいという一心でやってきました。ともに一軍でシーズンを送ろうと決意した仲ですし、僕が頑張ることで、彼の原動力になってくれればいいなって気持ちはありますね」
知野は一軍でなかなか結果を残すことはできなかったが、5月26日のオリックス戦、8回からショートの守備につき、9回裏にプロ初安打となるホームランを放っている。
「ああ、あれは本当に嬉しかったですね」
桑原はそう言うと、この日の取材で一番のハートフルな笑顔を見せてくれた。
首脳陣からの信頼と激励
多くの人が背中を押してくれたおかげで今の桑原がある。今季、守備や走塁でらしくないイージーなミスをすることもあったが、三浦大輔監督は桑原を信頼して使いつづけた。昨年、ファームにいたとき三浦監督から言われたことがある。
「ここで終わるわけじゃないだろう」
同様に万永貴司コーチなど、多くの人たちから叱咤激励され、持ち味の泥臭さを徐々に取り戻していった。