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「ニシコリは僕に時間をくれなかった」 ジョコビッチが錦織圭の戦術に脅威を感じたワケ〈単なる17連敗ではない〉 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2021/09/06 17:00

「ニシコリは僕に時間をくれなかった」 ジョコビッチが錦織圭の戦術に脅威を感じたワケ〈単なる17連敗ではない〉<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

直接対決で17連敗となったとはいえ、ジョコビッチ相手に第1セットを取った錦織。可能性を感じる戦いぶりだった

 それでも錦織は「次にやるときは怖さも減るかなと。何もできず簡単に負けてしまうのが続いていたので、それは若干、克服できたのかなと思う」と振り返った。

 確かにこの試合は、ジョコビッチとの今後の戦いにヒントを提示した。

7年前は「激しくボールを“しばく”」作戦が成功したが…

 過去の対戦では、早い展開に加え、激しくボールを“しばく”(以前、錦織がよく使った表現だ)プレーを試みた。ボールをつぶすような強打である。コートの中に入って相手の時間を奪った上で、高い打点からフラット気味に叩くのだ。14年の全米ではそれが成功し、勝ちにつながった。同年のATPファイナルズや翌15年のローマでも、その猛攻が見られた。それらを現地で観戦した筆者は、心が浮き立つ思いだった。錦織らしさはそこにあると信じていた。

 だが、そのATPファイナルズでもローマでも、錦織は勝てなかった。猛攻は1セットしか続かず、精度が落ちて反攻を許した。ボールをしばき続けるのは至難の業なのだ。完璧なフットワークでタイミングを合わせ、全身をムチのようにしならせなくては打てない。これを続けていたら、体がもたない。もちろん、エラーのリスクも最大級だ。

 ジョコビッチ陣営が、猛攻はせいぜい1セットしか持たないと見切っていた節もある。確かに手がつけられないが、浮き足立つことなく、嵐が通り過ぎるのを待てばいい、セットを取られても、最後には間違いなく勝てる、と。

 ただ、錦織側が攻めなければジョコビッチを崩せないと考えたのは自然だ。実際、成功体験もあった。だから、早い展開を土台に、攻め急ぎや攻めすぎを我慢し、攻めるべきところで攻める、そんなテニスを模索した。それが、14年全米での勝利から今日まで7年に及んだジョコビッチへのチャレンジだった。

「まだ差はあるが、だいぶ近づいている気はした」

 今回も届かなかったが、錦織は「この何回かの対戦では一番良かった」と話した。「だいぶ前にローマとマドリードで対戦したときくらい惜しい試合はできた」という。

【次ページ】 単に「17分の1」で片づけられる試合ではない

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