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なぜ西武に今まで“生え抜き2000本安打”がいなかった? 栗山巧に見る“ライオンズ文化”と新たな覚悟とは《清原、秋山、和田、松井稼は他球団で》 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/09/05 06:01

なぜ西武に今まで“生え抜き2000本安打”がいなかった?  栗山巧に見る“ライオンズ文化”と新たな覚悟とは《清原、秋山、和田、松井稼は他球団で》<Number Web> photograph by Kyodo News

西武で初となる2000本安打を達成した栗山巧の、プロ初安打(2004年9月)

秋山と清原、現監督の辻も移籍を経験した

 西武ライオンズの黄金期を築き「AK砲」と言われた秋山幸二、清原和博も移籍した。またこの時代の内野の要でつなぐ打撃でも活躍した現ライオンズ監督の辻発彦もヤクルトに移籍した。

 ただし伊東勤、和田博実と不動の正捕手だった2人は移籍せず。守備の要は放出しないという方針だったのだろうか。ただ2006年から2018年までマスクをかぶった炭谷銀仁朗(ライオンズで653安打)は巨人にFA移籍している。

 太平洋クラブ・ライオンズ~クラウンライター・ライオンズ時代には、後に阪神で大活躍をした真弓明信(ライオンズで214安打、通算1888安打)、強打の捕手・若菜嘉晴(ライオンズで167安打、通算1037安打)もトレードで出している。トレード相手は田淵幸一、古沢憲司ではあったが、ライオンズファンにとってはどちらが良かったか、微妙なところだろう。

 ライオンズで育ち、他球団に移籍してから2000本安打を達成した選手は、松井稼頭央、清原和博、秋山幸二、和田一浩の4人。ライオンズファンの心には、大記録達成のニュースのたびに少し残念な感情がよぎったのではないか。

 ただ、ライオンズは浮き沈みを繰り返しながら、何度も黄金期を作っている。それは、大物選手が全盛期で移籍し、若手選手が台頭する歴史を繰り返してきたことが大きい。

 言い方は酷になるが、ライオンズは「衰えたベテラン」に悩んだ時期はほとんどない。健全な新陳代謝が機能してきたとも言えるだろう。

 栗山巧は打撃タイトルだと2008年の最多安打だけ、ベストナイン4回、ゴールデングラブ1回を受賞しているが、オールスター戦は2016年に選出されただけ。並み居る2000本達成者の中では地味な存在だと言えよう。2016年にはFA権を取得したが、これを行使したうえで残留した。他球団に行けば年俸アップが期待できたが、それよりもライオンズ残留を選んだ。球団も栗山のリーダーシップが今後も必要と判断したのだ。

同学年の中村剛也の存在も大きいのだろう

 恐らくは同期、同学年の中村剛也の存在も大きいだろう。中村は本塁打王6回、打点王4回、現役では最高の実績を残すスラッガーだが、彼も2018年に海外FA権を行使したうえで残留した。球団がこれを容認したのだ。

「去る者は追わず」が基本方針のライオンズだが、球団創設72年目、埼玉移転44年目にして「レジェンド」を作る必要性を覚えたのかもしれない。

【次ページ】 栗山巧と中村剛也は、レジェンドになる

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