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《2000本秘話》栗山巧を“劇的に変えた”プロ2年目の引っ張り禁止令…田邊コーチが語る“粗削り時代”とずば抜けていた才能
posted2021/09/05 11:03
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Saitama Seibu Lions
レフト前にライナー性の当たりが飛ぶ。栗山巧の真骨頂とも言える逆方向へのヒットが、プロ通算2000本目の一打となった。
2021年9月4日の東北楽天戦で、ライオンズ球団生え抜きの選手では初となる大記録を達成した。スタンドのビジター応援席では、全国から集結したライオンズファンが栗山の名前が入ったタオルやフラッグを振って祝福した。
栗山は試合後の会見で語った。
「たまたま自分が球団生え抜きでは初めてになりましたが、偉大な大先輩たちの背中を追ってきた結果だと思います。入団からずっと応援してくれているファンの方、最近応援し始めてくれたファンの方、さまざまな方がいらっしゃると思いますが、皆さんからこれからも応援していただけるような選手であり続けたいです」
栗山のプロ初ヒットは04年9月24日だった。大阪ドーム(現・京セラドーム)での大阪近鉄バファローズ戦で小池秀郎投手から打ったライト前ヒット。その日から18年、一歩一歩、地道に積み重ねてきた努力が結実した瞬間だった。
「やっぱり田邊さんでしょうね」
育英高校(兵庫県)からドラフト4巡目指名でライオンズに入団し、今年で20年目を迎える。多くのヒットを積み重ねてきた栗山が、最も影響を受けた指導者は誰だったのだろうか。2000本安打が視野に入り始めた昨年、その質問を栗山にぶつける機会があった。
「やっぱり田邊さん(徳雄・現ライオンズ三軍統括コーチ)でしょうね」と栗山は即答した。
栗山が入団した02年当時、田邊はライオンズで二軍コーチを務めていた。入団2年目のある日、田邊コーチは栗山に「引っ張り禁止令」を言い渡した。打球をすべて、左打者の栗山にとっての左方向、レフト側に打てと指示したのである。
栗山は回想する。
「高校まではそんな打撃はもちろんしたことがなくて、僕にとってはすごく難しいことでした。それなりの練習量が必要でしたね。マシンにしても、田邊さんが投げてくれる緩いボールにしても、すべて逆方向へ打つ練習を繰り返しました」