甲子園の風BACK NUMBER
智弁和歌山優勝のウラに“元主将”のデータ分析…中谷監督が期待していた正捕手候補「しんどかったけど、やっててよかった」
posted2021/09/02 17:05
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
21年ぶり3度目の夏の王者に輝いた、わずか3日後の9月1日。智弁和歌山はもう新チームの初陣に臨んでいた。
5番・一塁で甲子園でも活躍した岡西佑弥を新主将に据え、和歌山県下新人戦2回戦で耐久に14-2の5回コールド勝ち。岡西は「目標は日本一です」と力強く宣言した。2018年8月に、高嶋仁前監督の後を引き継ぎ、中谷仁監督が就任してから4代目のチームがスタートした。
この夏は、就任3年での全国制覇だった。「こんなに早く……」と中谷監督自身も驚いていた。
初甲子園で見えた選手との関係性
甲子園のグラウンドに“監督”として初めて立ったのは、2年半前。2019年のセンバツだった。
その開幕前の甲子園練習で、強烈に印象に残った光景がある。ノックを打っていた中谷監督がキャッチャーフライで締めくくろうとするが、これがなかなかうまく上がらない。1本目は空振り。2本目は一塁後方まで飛んでしまった。
阪神、楽天、巨人で長くプレーした元プロ選手が、監督に就任後初の甲子園ということで、大勢の報道陣が見守っていた。もちろん練習時間には限りがある。中谷監督は冷や汗をかいた。その時だ。
「いつもは一発でーす!」
当時3年だった主将の黒川史陽(現・楽天)や西川晋太郎(現・立教大)が、報道陣に聞こえる大きな声で監督をフォローしたのだ。
「思ったより見ている人が多かったので、ヤバイなと……」。そう硬くなっていた指揮官に対し、黒川や西川、捕手の東妻純平(現・DeNA)は1年夏から甲子園に出場しており、この時は4季連続で、慣れたものだった。