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日本人のフィジカルが韓国人よりも劣っているのはなぜ? 元Kリーグのトレーナーが驚いた育成年代の「食」 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byTomoo Tsukoshi

posted2021/08/25 17:00

日本人のフィジカルが韓国人よりも劣っているのはなぜ? 元Kリーグのトレーナーが驚いた育成年代の「食」<Number Web> photograph by Tomoo Tsukoshi

2020年、蔚山現代FCでACL制覇に貢献した津越智雄トレーナー。ガンバ大阪などで活躍した元監督代表FWイ・グノを笑顔で写真におさまった

 Kリーグ時代、津越はACLで戦う日本チームの分析を行っていた。Jクラブとの対戦の際には、スカウティングと連携して共に戦略を練っている。実際にKリーグのスカウティング部門は、Jクラブをどう見ていたのだろうのか。

「ACLで対戦したFC東京やヴィッセル神戸、浦和レッズ、川崎フロンターレのDF陣は、『上背で劣り、スピードに難がある』というのが蔚山現代の分析でした。韓国では対峙して勝てるところから崩していく、という考えが浸透しています。だから試合ではFWを目掛けてロングボールを放り込み、ワイド(ウイング)選手のスピードでシンプルに崩していくことを徹底しました。日本(のクラブ)にはそれが最も効率的な戦いだ、と。逆にいうと中国クラブにはそれが通用しませんでした。正直にいえば、Jクラブにはレナト・アウグスト、オスカルにフッキのような怪物がいる中国クラブのような恐さはない、というのが蔚山のスカウト評価でした」

 その一方では、Jクラブに韓国にはない強みを感じることもあった。

「川崎フロンターレのようにアイデアや技術で相手を崩していく、という能力がKリーグは乏しいんです。チームとしての連携や創造性という部分では、日本より劣るという見方を韓国人スタッフがしていました。これには韓国サッカー界の事情の影響もあります。国内の市場が日本より小さいため、アジアで勝ち、選手を売るというビジネスモデルはKリーグの方が浸透しています。欧州や中東に高値で売るためには、フィジカルというのは切り離せない要素となる。創造性を育てるノウハウはないが、フィジカルは違う。だから可能性が高いところに投資する、という考え方になるわけです」

豪州、中東、中国からも学ぶことは多い

 津越は取材中、日本と韓国のどちらの育成が正しいということはない、と度々繰り返していた。それでも、鎌田のようなフィジカルに高い意識を持ち、伸ばしていこうという選手はまだ日本では限定的だとみている。そして、Jリーグ全体でも長い時間をかけて食事やトレーニング方法を見直す時期に来ている、と提言する。

「日本人が欧州のビッグクラブでレギュラーというトップレベルを目指す場合、やはりまだフィジカル面での差は埋められていない。韓国に限らず、中国や中東ではよりリアリズムを求め、欧州からトップレベルのコーチやトレーナーの招聘を行い始めている。日本がそこに置いていかれないためには、Jリーグでもフィジカルの重要性を抜本的に見直し、専門家を育成していくべき時期に来ている。

 その際には欧州に限らず、アジアなどの様々な国での経験やノウハウを還元する作業も必要でしょう。フィジカルの視点でいえば、オーストラリアや中東や中国といった国からも学ぶことはたくさんある。選手だけではなく、監督やコーチ、フィジカルやメンタル、スカウティングなどの専門家達が世界に出て、他国の“当たり前の基準”を感じなければ、日本の成長はここで止まってしまうという危機感がありますね」

 日本人フィジカルコーチとして、韓国チームでACLを制覇したという津越の経験は稀有なものだ。津越は自身の経歴書の中に新たに中東クラブを付け加えたい、と今後の願望を明かす。こうした各分野の専門家の価値を見直し、後進を育成していくことも、世界との正しい距離を測る際のひとつの指標となっていくはずだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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