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日本人のフィジカルが韓国人よりも劣っているのはなぜ? 元Kリーグのトレーナーが驚いた育成年代の「食」
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byTomoo Tsukoshi
posted2021/08/25 17:00
2020年、蔚山現代FCでACL制覇に貢献した津越智雄トレーナー。ガンバ大阪などで活躍した元監督代表FWイ・グノを笑顔で写真におさまった
津越の教え子には、中島翔哉や鎌田大地ら日本代表クラスの選手がいる。特にルーキーイヤーの鎌田とは、鳥栖時代に選手としての土台作りを二人三脚で行ってきた。
当時、フィジカル面に課題を感じていた鎌田は、チーム練習終了後に週2、3日程度、厳しいトレーニングを自身に課していたという。津越が述懐する。
「大地は、入団当時から海外志向が強い選手でした。ルーキーイヤーのシーズンから、『筋肉量を増やしたい。パワーを向上させたい』と私に相談をしてきたんです。以降チーム練習が終わった後、ウエイトトレーニングとシュート練習の2つのメニューを、1年間段階を踏みながらこなしていった。海外で戦うためにはキレやスピードだけではなく筋肉量も必要で、持ち前の技術をより活かすためにシュートの精度を上げ、DFにとって怖い存在になるという必要性を感じていたんです。高卒ルーキーでこれだけ明確な目的意識を持っている選手はいなかったため、驚きましたね」
15年シーズン終了後、鎌田は津越と共にセリエAやブンデスリーガ、プレミアリーグといった世界トップレベルの試合を現地観戦したという。津越は既に鳥栖を退団し、韓国に渡ることが決まっていたが、それでも鎌田は2人分の渡航費を自費で賄ってまで津越に意見を求めた。ドルトムント、ユベントス、マンチェスター・ユナイテッドなどの試合を観戦したが、当時の会話を津越は鮮明に覚えている。
フィジカルへの意識が変わった
「大地は技術的な部分には絶対の自信を持っていた。上のレベルでも通用するはずだ、という感覚もあった。それでも、ドイツやイタリアのコンタクトの強さ、一つ一つのプレースピードに触れて、『やっぱり来てよかった』と話していました。そして、『ここに追いつくには早く上のステージに身を置かないと間に合わない』という危機感も同時に感じていた。フィジカルを理由に欧州での適応に苦労するであろうことを肌で感じたことで、大地は変わった。この時以降、判断スピードへの意識、コンタクトの仕方といった細部を、Jリーグ基準ではなく、欧州の基準に自分の中で整理し直したんだと思います」
津越が考えるフィジカルの定義とは、“筋肉量”がひとつのキーワードとなる。自身の方法論から導き出したのは、アジア人が筋肉を形成する上で重要なのは、先天性よりも食事と筋力トレーニングが占める割合が大きいということだった。摂取するタンパク質の量が筋肉量の差となって現れ、さらにトレーニングで伸ばせるというのが津越の持論だ。
鎌田然り、中島にしても、これまで指導してきた“海外で戦える”日本人選手にはそういったアドバイスを送ってきた。その理由を韓国での経験を基にして解説する。