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「会場が家に近いから」…緊張のかけらも見せないパラ水泳・辻内彩野に、松岡修造が伝えた日本代表への期待感 

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松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

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photograph byYuki Suenaga

posted2021/08/24 17:03

「会場が家に近いから」…緊張のかけらも見せないパラ水泳・辻内彩野に、松岡修造が伝えた日本代表への期待感<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

独特のポジティブ思考でパラリンピックに挑む辻内彩野選手に、競技を見る側としての想いを伝えた松岡さん

辻内:もちろん水泳会場の東京アクアティクスセンターって、選手にとってすごく特別な場所なんですけど、結局、自分の家から自転車で行ける距離なんで。

松岡:それ全然、関係ないじゃないですか。

辻内:いや、ありますよ。特別感がないじゃないですか。私、どちらかというと海外に行って試合したい人間なんです。

松岡:いやいや、それも分かりますよ。

辻内:もちろん日本でやるパラリンピックなんて、選手でいる間に1回経験できるかどうかですし、ものすごく特別な大会だとは思うんですけど。

松岡:それはいいかもしれない。なぜなら本当にパラリンピックが始まったら、彩野さんの気持ちが変わる気がするから。自国でやるってこういうことなのかって、日本代表ってこういうことなんだって、彩野さんの中で見えてくる気がするんです。もしかすると無観客になるかもしれません(注:インタビューが行われたのは「無観客」決定前)。でも、見ている人たちは選手からメッセージを感じようとする。だからパラリンピックやオリンピックで人々の心に残るのは結果だけじゃないんです。

辻内:そうかもしれませんね。自分がやることといえば自己ベストを出すとか、日本記録を更新するとか、決勝に残るとか、メダルを取るとか、そういうことしか考えてなかったな。

応援するだけで少し世の中が明るくなる

松岡:彩野さんはこの(コロナの)パンデミックの中で行われる東京パラリンピックをどう思われますか?

辻内:私がコロナ禍で感じたのは、世の中に暗いムードが漂っていても、テレビやネット配信なんかの画面越しでスポーツを応援すると、家の中が明るくなるということです。だから、どんな形でも(東京パラリンピックを)やること自体は結果的にいいことになるんじゃないかなと思っています。スポーツの力って、やっぱりすごいので。国民の皆さんの中には、自分達がこんなに我慢しているのに何で選手は練習してるんだとか、なんで大会やるんだって思う方もたくさんいると思うんです。でも、一回でもテレビやスマホで試合を見てもらえたら、何か少しでも変わるんじゃないかな、ちょっとだけ世の中が明るくなるんじゃないかなと。それが東京オリンピック・パラリンピックをやる意味になるんじゃないかなと思います。

松岡:今回、話を聞いて、彩野さんは思考回路が普通じゃないです。僕も普通じゃないと言われますけど。だからいつも自分の置かれた環境から新しいものを探す力を持っている。そう考えたときに、彩野さんは将来的に自分にどんなことができると思っていますか。これはものすごく大きな話です。

辻内:何ですかね……。どこかの誰かの元気の源にはなれるんじゃないかな。

松岡:彩野さんの物事の乗り越え方はスパン! ってシャープだからね。そこがすごくいいなって思います。

(構成:高樹ミナ)

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辻内彩野(つじうち・あやの)

1996年10月5日、東京都生まれ。小学3年で水泳を始める。大学1年のときに視力低下や視野異常を起こす進行性の難病「黄斑ジストロフィー」と診断され、2年のブランクを経て2017年にパラ水泳へ転向。直後のジャパンパラ大会では3種目で日本記録を更新し1位に。19年には世界選手権に出場し、女子100m平泳ぎで銅メダルを獲得。今年3月の日本選手権で50m自由形の派遣標準記録を突破し東京2020パラリンピック日本代表に選出された。現在、10種目で日本記録、うち3種目ではアジア記録を保持している。三菱商事所属。

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