松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
「会場が家に近いから」…緊張のかけらも見せないパラ水泳・辻内彩野に、松岡修造が伝えた日本代表への期待感
posted2021/08/24 17:03
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph by
Yuki Suenaga
パラリンピック競技には特有のルールがある。その最たるものがクラス分けだろう。ひとくちに障害といっても千差万別で一つとして同じ状態はないといわれる。
その中で選手たちがフェアに競えるよう設定されているのがクラス分けだ。辻内彩野選手が出場する水泳競技にも14のクラスがあり、視覚障害クラスは3つある。さらにそこに自由形・背泳ぎ・バタフライ=S、平泳ぎ=SB、個人メドレー=SMと泳法による3つの区分が加わって……。
この複雑なルールについて辻内選手にたずねながら、松岡修造さんの質問は独特な思考を持つ彼女の真意へといよいよ迫っていく。(全4回の4回目/#1へ)
#3 パラ水泳転向直後に日本新記録!辻内彩野のモチベーション「高校生の頃の自分に勝つ」に修造が見たアスリート魂 より続く
種目が削除!? パラリンピックならではの事情
松岡:ところで彩野さん、50mも400mも泳ぐってどういうことなんですか? だいぶ距離が違いますけど。
辻内:そこにはパラ水泳ならではの特殊な事情があります。オリンピックの水泳競技って男女とも、例えば400mは一大会で1日だけ、50mも1日だけで、決勝は男女2レースのことが多いですよね。それがパラリンピックの水泳競技は障害の度合いと程度で「クラス」が細かく分かれていて14クラスもあるので、単純計算すると、例えば50m自由形だけでも決勝が14回あるわけです。それだとメダル数やレース時間の関係が出てきてしまうので、クラスによっては種目自体が削除されちゃうんです。
松岡:自分の得意種目そのものが無くなって、パラリンピックに出られなくなった選手がいるという話、聞いたことがあります。
辻内:私のS13クラスも、もともと200m自由形がなくて、どっちかといえば得意な100m自由形も東京パラリンピックでは削除されてしまいました。私が戦えるのは自由形だから、そうなると残っているのは50mと400mしかない。それで極端に短いか、極端に長いかみたいな話になるんです。400mは会場の雰囲気を確認するというのをいつも優先して、本命は50mです。