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《五輪閉会式》57年前のIOC会長スピーチはわずか2分だった!「天皇陛下も見ておられる…」本当はNGだった“伝説の演出”

posted2021/08/17 17:01

 
《五輪閉会式》57年前のIOC会長スピーチはわずか2分だった!「天皇陛下も見ておられる…」本当はNGだった“伝説の演出”<Number Web> photograph by Getty Images

8月8日の東京五輪閉会式。やっぱり長かったバッハIOC会長のスピーチ

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近藤正高

近藤正高Masataka Kondo

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8月8日の東京五輪閉会式をあらためて検証する。前編は57年前、東京五輪の閉会式と比較していく(全2回/後編へ)。

 東京2020オリンピックが8月8日、17日間にわたる会期を終えた。その夜、午後8時に始まった閉会式では、同10時15分頃に聖火が消え、8月24日より始まる東京パラリンピックの予告映像が流れたあと、フィナーレとしてスタジアムの屋根から花火が打ち上げられた。ここまでかかったのは2時間18分と、4時間近かった開会式の半分ほどだが、長いといえば長い。IOCのバッハ会長の閉会を宣言するスピーチも、開会式での挨拶より短縮されていたとはいえ、やはり長かった。

57年前は「1時間以上も短かった」

 これとくらべたら、1964年の東京五輪でのIOC会長ブランデージの閉会宣言ははるかに簡潔だった。ブランデージは、昭和天皇と日本国民に感謝の意を表し、4年後のメキシコシティ五輪にすべての国の若人が参集されるよう呼びかけたあと、《この大会が 人類の喜びと親しみのもととなることを祈り 世界の幸福のために いっそうの熱意と勇気と栄誉をもって 世代をこえ 永遠に オリンピックのこころが伝えられんことを――》と結んだ(記録映画『東京オリンピック』字幕より引用)。『第18回オリンピック競技大会公式報告書』によれば、閉会宣言は午後5時28分30秒に始まり、同5時30分30秒には聖火を消す段取りに移ったというから、わずか2分で終わったことになる。

 このときは閉会式全体を通しても1時間15分(午後5時~同6時15分)と、今回より1時間以上も短い。それでいて、前回の東京五輪の閉会式は、世界平和の理想を示すものとして人々の記憶に残り、いまなお語り草となっている。それというのも、開会式のように選手たちが各国ごとに整然と入場するのではなく、国の違いを超えて肩を組んだりしながら一斉に入場したからだ。このときの入場のスタイルは「東京方式」として以後のオリンピックの閉会式でも踏襲され、今回も同様の光景が見られた。

57年前のほうが「もっとカオスだった」

 いや、市川崑総監督の記録映画『東京オリンピック』を観ると、選手たちは今回よりはるかに自由を謳歌しているように感じられる。行進の先頭となる選手たちは互いに腕を組み、中央には日本の旗手(競泳の福井誠)を肩車に乗せて入場してきた。このあとも雪崩を打つように選手がグラウンドへ駆け込んでいく。整理員たちが何とか制止しようとするも、なすすべもなく戸惑う様子が映画でも確認できる。結局、このとき整然と入場したのは、しんがりの日本選手団だけだった。

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