甲子園の風BACK NUMBER
今年の大阪桐蔭は発展途上? “崖っぷち”を救った主将と殻を破ったエース「一番いい勝ち方」で乗り込む甲子園
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/16 17:00
大阪大会決勝・興国戦でサヨナラ打を放った主将・池田を迎える大阪桐蔭ナイン。ギリギリの戦いを経験したことで、チーム力が向上した
池田はこの夏、ギリギリの場面で打席に立つことを楽しめている。
「チームのためにやれるんで。打てなかったらもちろん悔しいんですけど、打てれば勝ちにつながるので、自分的には、そういう打席でこそ立ちたいというふうに思っています。自分はキャプテンでもあるので、チームが苦しい時に1本出すのが役割。そこで結果を出せたことはよかったです」
夏前までは打撃不振に陥っていたが、タイミングの取り方を見直したことで復調した。
「自分のフォームを分析すると、上半身でタイミングを取ることがあったんですけど、下半身でタイミングを取ることを意識したら、球の見え方がよくなりました」と表情は明るい。
池田は求める打撃の理想が高く、「完璧主義」だと、以前、大阪桐蔭の橋本翔太郎コーチが話していた。
「結構繊細ですね。例えば、根尾(昂・中日)や藤原(恭大・ロッテ)はわかりやすかった。バッティング練習で、こっちが『いいな』と思った時は、彼らもいいなと納得していた。でも池田の場合は、こっちが見ていて『ええ感じで打ってるやん』と思っても、本人は『いや、今のは……』という感じなんです。自分の追い求めるものがあるんでしょうね」
今、その理想に近づきつつある手応えを感じているのかもしれない。大阪大会では、チームトップの.654という驚異的な打率を残し、甲子園に乗り込む。
センバツでの悔しい記憶
一方で“投”の柱・松浦慶斗は、崖っぷちの中で殻を破った。
身長186センチ、体重94キロと体格に恵まれ、プロも注目する最速150キロ左腕。しかし今春のセンバツは悔しい記憶しか残らなかった。
初戦の智弁学園戦に先発したが、初回に安打と2つの四死球で無死満塁とし、4点を奪われた。縮こまったようなフォームで、腕が振れていなかった。
「『絶対初回を抑えたろう!』という気持ちで行ったんですけど、それが空回りしてしまった。初回から自分がああいうかたちで失点してしまい、チームに流れを持ってこられなかった。不甲斐ない。もっといいピッチャーになって帰ってきます」
そう誓った。