野球善哉BACK NUMBER
甲子園“史上最遅”ゲームセット(21時40分)を現地取材して思った「真夏の高校野球、もっとナイター開催すべきでは?」
posted2021/08/16 17:01
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
KYODO
第4試合終了後に甲子園のスコアボード上にある時計の針を眺めると21時を優に超えて40分を指していた。
“最遅ゲームセット”と騒がれた15日のことだ。その時に湧き出たのは、高校生が遅い時間まで活動していたという否定的なものより、どこか新しい世界を見た……そんな感情だった。
最後までファイトする高校球児たち。
足をつって一人の離脱者が出たとはいえ、夏とは思えぬ爽やかな風が吹いた試合後の空気感はとても清々しいものだった。
46年ぶりとなる3日連続の順延など、103回目の夏の甲子園はイレギュラーなことばかりが続いている。
15日は未明から強い雨が降り続いたが、午前中には収まると踏んだ日本高野連は「雨が止み次第、開始する」とアナウンス。その後に第1試合を午前11時に開催するのを皮切りに4試合の予定開始時刻が発表された。
4年前の「22時6分終了」を思い出す
第1試合の開始時間から4試合を行うとは考え難かったが、第4試合はプロ野球の開催時と変わらない18時半開始予定とする思い切った策に出たのだった。結局、開始時刻が19時を超えることになり甲子園では史上最も遅いプレイボールとなったわけだが、この件で思い出されるのが、2017年春の東京都大会決勝戦だ。
4年前の4月27日、18時にプレイボールになった早稲田実―日大三の試合。両チーム合計7本塁打がでる打撃戦になり、延長戦に突入。試合が決した時には、時計の針が22時を回っていた(22時6分試合終了)。
平日の夜に開催されたこともあり、この試合に関しては賛否が渦巻いていた。22時まで高校生が課外活動をして良いのか?と。早稲田実のスラッガー清宮幸太郎(当時3年)が人気選手となっていたために、混乱・混雑を避ける処置として東京都高野連が決断したのだった(収容人数の多い神宮球場での平日のナイターを選択した)。しかし試合が長引いたことで批判が思わぬ方へと向いたのだった。
開始時間が遅くなった理由こそ異なるものの4年前のこの件と今回は、「苦渋の決断」だったという面において連盟の想いは同じだろう。
「終了時刻」か、「熱中症リスク」か
「遅い時間に高校生が課外活動をして良いのか?」という批判が「教育論」を前提にしていると考えるとここでの議論は、「教育のどの部分に視点を置いて」この問題を見るかということが重要になってくる。